ただし、みんなが同じジャンプを跳べて、演技構成点でも差がつかなくなってくる時代になると、再び、ジャンプが注目されるだろうとも予測する。
羽生自身、先の会見でジャンプについてはこう語っている。
「難しいジャンプを跳びつつ、それがやっぱりあるからこそ芸術が成り立っているんだなというようなジャンプをこれからもしていきたい」
さらに羽生はこうも踏み込んだ。
「(4回転アクセルは)まだ誰も試合で成功させたことがないし、実際に4回転半の練習をしている人も少ない。初めの1人になれなくても自分の夢である4回転アクセルを成功させたいなという気持でいます」
ジャンプは6種類あり、その中で5種類は後ろ側に滑っていって跳ぶが、アクセルジャンプだけは前側から跳んでいって後ろ向きで降りてくるため、4回転といっても、もう半回転まわらなければならず、4回転半ジャンプとなる。吉岡教授は続ける。
「将来的には4回転のアクセルを跳ぶ選手が出てきて、5回転というのがちょっと見えてくる感じになったときに採点表に取り入れるということになるでしょう。それが来年になるのか、さ来年になるのかはわかりません。羽生君は怪我の回復状態にもよりますが、まずは4回転アクセルを跳んでから、その先の5回転というのは可能であると思う」
今までの4回転と5回転では技術的にどう変わるのだろうか。
「ジャンプの高さを出して、滞空時間を長くし、今よりちょっと速くまわれば、物理的には5回転は十分可能です」
吉岡教授によれば、4回転では滞空時間が0・7秒から0・8秒いかないくらいで、回転の速さは1回転あたり0・2秒かかるかかからないくらいだという。
「跳ぶ前の動作として、氷から足が離れるまでにある程度の回転をしていくものなので、前後のことを考えると、4回転ジャンプといっても、空中で3回半前後しかまわっていない。それを5回転にしましょうという話になると、空中で4回転半くらいまわればいいワケです」