

漫画家&TVウォッチャーのカトリーヌあやこ氏が、「海月姫(くらげひめ)」(フジテレビ系 月曜21:00~)をウォッチした。
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男子禁制アパート「天水館(あまみずかん)」に住むのは全員オタク女子。人生に男を必要としない通称「尼~ず」だ。クラゲオタクな月海(つきみ=芳根京子)は、女装男子・蔵之介(瀬戸康史)と出会い、彼の発案でクラゲドレスをデザインするっていう、そんな月9ドラマ。
月9といえば、チャカチャーン♪という小田和正の「ラブ・ストーリーは突然に」が鳴り出せば、鈴木保奈美が「カーンチ、セックスしよ!」なんて笑顔で言い放った「東京ラブストーリー」(91年)から早27年。今や引きこもりで人見知りのヒロインにキスをするのは、王子様じゃなくてお姫様(女装男子)という、夢と希望とバリエーションあふれる世の中だ。
けれどヒロイン・芳根ちゃんが裁ちバサミを手にすれば、一瞬にして「尼~ず」が「キアリス」化? どうしても思い出すよね、NHKの朝ドラ「べっぴんさん」。この世に三大出損(出たら損する)朝ドラがあるとすれば、この「べっぴんさん」に「まれ」、そして「わろてんか」における松坂桃李。ちなみに「純と愛」はぶっちぎりの殿堂入りだ。
明るく前向きな朝ドラヒロインではなく「なんか、なんかな」が口癖のすみれ(芳根)が、子供服メーカー「キアリス」を立ち上げるまではまだいい。その後はひたすら娘の初恋相手のドラムソロに娘の家出、娘の就職に娘の結婚と、ヒロインどこ行った?てな「なんか、なんかな」的不憫(ふびん)な展開。そりゃもう引きこもって「尼」になるって。
暗がりの中、ボソボソとクラゲに語りかける芳根ちゃんが愛しい。そして少女漫画の王道であるシンデレラ展開、目立たずさえない女子に、蔵之介が「おしゃれ」という魔法をかけると、あら不思議。なんて素敵なべっぴんさんに変身!……て、はずでしょ? はずなんだけど、メイクをしてもビックリするほど地味なんだ、芳根ちゃん。なんだかなー、がっつりヘアメイクをすればするほど生活に疲れた奥さん感が!
むしろメガネにおさげ、はんてん姿の芳根ちゃんの方が全然魅力的なんだもの。思えば「尼~ず」を演じる松井玲奈、内田理央、木南晴夏も普段のルックスを隠しまくって、とことんクセの強いキャラを輝かせる「逆べっぴんさん」ぷり。今さら芳根ちゃんも「べっぴんさん」になんぞならなくてよし! なのだ。
※週刊朝日 2018年3月2日号