税務署では事前予約すれば、相続税の相談に応じてくれる。日本橋税務署=東京都中央区
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相続のケーススタディ(週刊朝日 2018年2月23日号より)
相続のケーススタディ(週刊朝日 2018年2月23日号より)

 きょうだいで争うこともある相続。生前に話し合うことが大切だといわれるが、実際にどうすればいい? 生前から準備していた場合、していなかった場合をケーススタディーしてみよう。

【相続のケーススタディ】

■ケース1 円満に相続 家族のつながり保つ

長男「申し訳ないけど、土地は俺が引き継ぐよ」
長女「長い間、お疲れ様でした。父さんの言うとおりにします」

 長男は母を亡くしてから5年間、父と暮らしてきた。独りでは寂しくなるだろうし、健康維持も大変だとの思いからだ。両親が住んでいた家は、長男名義で建て替えた。

 父は2年前に転んで足の骨を折ったのを機に、歩くのが不自由になった。以来、長男とその妻が面倒を見てきた。

 父は体調が悪化するなか、思うところがあったのだろう。相続について、長男と長女と事前に話し合っていた。預金通帳や自宅の登記簿を見せて、現金はあまり残せないことを説明。

「商売をたたんでから長いこと経つ。自営業だったので国民年金しか加入しておらず、この先もらえる年金にも限りがある。母さんの通院や介護にもお金がかかった。悪いけど、俺の預貯金はあてにしないでくれ」

 自分で書いた遺言書を見せて、金庫に保管しておくと言い渡していた。こんな内容だった。

「土地は長男に、現預金は長女に譲り渡す」

 長女の取り分は最低限の取り分である「遺留分」(法定相続分の半分、この事例では1375万円)を下回っていた。

 しかし、長女は父の面倒を見てきた長男の苦労を知っていた。長女の夫の父親も脳梗塞で倒れ、仕事で忙しい夫に代わって、自身も義父のリハビリを手伝うことがある。介護の大変さはある程度わかっているつもりだ。土地を売って現金に換えると、長男家族の住む場所も失われてしまう。

 遺言書の内容を生前に知って、長男とも話し合い、心の準備はできていた。長男も父から諭されていたのか、「土地をもらって当然」という姿勢は見せず、妹に遠慮がちだった。

 通帳や印鑑のありかを聞いていたこともあって、手続きはスムーズだった。相続税は実際に引き継いだ財産に応じて支払った。長男と長女は、相続が終わった後も連絡を取り合っている。父の遺言に従うことで、家族の大切さに改めて気付いた。

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