「今の中高年は50代半ばの役職定年、60歳の定年と2回、ガクッと給料が下がります。彼らはその後も働き続けますが、60歳超でも会社に貢献する人には給料で報いないと、職場に活力がなくなってしまいます。では、その原資をどうするか。人材獲得のため若年層分を削るわけにはいかず、結局、中間の中年層分が削られることになると思います。中年層でも優秀な人の給料は上がりますから、同世代で格差がより広がります」
削られた賃金は中年層がシニアになったときに返ってくるため、生涯賃金は変わらないというが、今の中年層よりお金が少なくなることには違いない。
足元では、財政難などに伴う国の負担増政策がサラリーマン世帯を直撃している。大和総研金融調査部の是枝俊悟研究員の試算では、年収500万円の片働き4人世帯が実際に使える収入(実質可処分所得)は、2011年から17年にかけて約25万円減った。内訳は、子ども手当の見直し12万円、社会保険料の引き上げ5.3万円、そして消費税率引き上げ8.8万円だ。19年秋に消費税率が10%に上がれば、20年は17年よりさらに約5万円減る。
「今後も年収850万円以上の給与所得控除の上限引き下げが行われるなど、平均以上の所得がある人を中心に、国は負担を求めていくことになりそうです」(是枝さん)
これからの人たちは、収入面では明るい話がなさそうだが、マネーの専門家たちはそんな時代だからこそ自己研鑽に励んで「稼ぐ力」をつけることが収入アップの近道と口をそろえる。
ファイナンシャルプランナー(FP)の藤川太さんが、
「20歳代で基本を身につけ、30歳代で意識して励めば、かなりのことができる。特にほかの人との『違い』を出せれば、確実に稼ぐ力はアップできる」
と言えば、野村証券に定年まで勤め経済コラムニストに転じた大江英樹さんも、
「出世して昇格・昇任するのを、まずは目指すべきです。お金がない若いときに投資に手を出し、あくせくして利回りを稼いでも、元手が少ないからリターンも知れています。それよりは仕事を一生懸命やってスキルを磨き、人的資本の力をつけたほうがよほどいい」