漫画家&TVウォッチャーのカトリーヌあやこ氏が、「きみが心に棲みついた」(TBS系 火曜22:00~)をウォッチした。
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イヤミスならぬイヤドラ。まさに、見たらイヤ~ンな気持ちになり、後味の悪さを噛みしめるドラマ?
ヒロイン今日子(吉岡里帆)は自分に自信が持てずすぐに挙動不審になるため、ついたあだ名が「キョドコ」。そんな彼女を精神的に支配するのは、大学で出会った男・星名(向井理)だ。「ありのままの自分でいいんだよ」と囁かれて以来、彼女は彼のとりこに。しかし甘い言葉は最初だけ。「キョドコのくせに」「お前は一生変われない」と追い詰め、「俺とつき合いたいなら見せてよ、キョドコの本気」と彼女に命令する。それが、友人たちの前を素っ裸で歩かせる羞恥プレイって、お前はただのド変態か!
イケメンヅラしたサイコパス野郎にムカムカし、それに唯々諾々と従うキョドコにあきれ果てるという無限ループなイヤドラ。共感できないヒロイン&サイコ男の圧迫といえば、同じ枠で放送されたドラマ「あなたのことはそれほど」があった。能面フェイスであっけらかんと不倫を重ねる波瑠に、異常な執着を見せる夫・東出昌大の棒演技が、思いがけないグルーヴ感を生み出した怪作。そのラインを狙っただろう本作は、今のところ向井の棒(棒は棒)が細い。顔が小さすぎるせい? 圧倒的な棒で猟奇を笑いに昇華させた東出に対して、感情的なヒステリックさがイヤ~ン。
そして、どんな恐怖も「は? 何か?」みたいな波瑠に比べると、キョドコの吉岡はリアルに痛々しい。新たな恋に踏み出そうとしても、また星名に引き戻される。その象徴は、かつて星名が首に巻いてくれたストールだ。ネジネジ巻きのストールを、彼女はいまだにはずせない。キョドコを呪縛する鎖のようなネジネジ巻き。しかし見るたび否が応でも脳裏に浮かぶ、「志乃はね」って語ってるネジネジ巻きの中尾彬。
それならいっそキョドコをすべて中尾彬だと思って見たら、どうだろう。好きな人に命令されて、ストリップ状態の彬。「待ってー、星名さん待ってー」と泣きながらタクシーを追いかける彬。どしゃ降りの中ずぶ濡れで「私、あの人から卒業できないんですぅ! 私、みにくいんですぅ!」と絶叫する彬。全部これ彬だと思うと、あら不思議。ネジネジされたイヤ~ンな気持ちがするするほどけて、このイヤドラをニッコリ笑顔で見れるから。
※週刊朝日 2018年2月9日号