小劇場ってすごく久しぶりだったので、最初はそれも怖かったんです。お客様がすぐ目の前にいらっしゃるわけですから。でも幕が開いたら、お客様がすごく素敵な“気”を出してくださった。お客様と一緒に作るという体験を、あの舞台で改めてできました。それも中嶋のプレゼントかな。「小劇場、いいぞ」って、私に教えてくれたんだと思うんです。

──鷲尾さんに、たくさんのものを残してくれたんですね。

 とくに人ですね。彼の財産って、人だったんだと思います。彼は人が大好きで、友達もたくさんいた。芝居を見に行ったり、ご飯を食べに行ったりするときはいつも一緒だったので、私たち二人を知ってくれている人たちが周りにたくさんいるんです。だから私が今どういう状況にあるのか、わかった上で支えていただけている。何かの折にはすぐ連絡があるし、うちに来てくれたり。ほんとうにやさしいです。

──中嶋さんと鷲尾さんの関係性は、多くの方にとってうらやましいくらい理想的なものだったように思います。

 幸せです。彼といい時間や関係を作ることができた。だからこその喪失感で、人生は表裏一体ですね。でもね、最近、「彼ならこう言うだろう」というのが浮かんでくるようになったんです。「しゅうちゃん、どうなんだろう?」って思うと、彼の答えが想像できる。だから「あ、これはいいかも!」って(笑)。これを幸せと思えるようになりたいですね。

 しょうがないですよね、いなくなっちゃったんだから。その事実を受け止めなくちゃいけないけれど、ただの女としての鷲尾真知子は、まだ受け止め切れていない。でも、「あのときああだったら」と思ったところで、何の解決にもならないし、彼も悲しむと思うんですよ。私は本当に至らないところだらけのどうしようもない人間ですから。そんな私を一人残してしまったことに対して、彼は絶対に「ゴメンね、悪かったね」って思っている。私が「なんで、なんで」って言っても彼が苦しむだけなので、それはもう言うまい、そう思っています。たまに思っちゃいますけどね(笑)。「もー、なんで!」って。でも私よりつらいのは彼だなと思うと、「はい、やめよう」と。

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