アナザー・カントリー/カサンドラ・ウィルソン
アナザー・カントリー/カサンドラ・ウィルソン
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ジャズ・ヴォーカル界における女王の移籍後の新作
Another Country / Cassandra Wilson (eOne Music)

 カサンドラ・ウィルソンが長年在籍したブルーノート・レコードから離れた。1993年の『ブルー・ライト・ティル・ドーン』から2010年の前作『シルヴァー・ポニー』まで8タイトル。この間、現代ジャズ・ヴォーカル界における女王の座を不動のものにしている。

 この新作の発売元である米eOne Musicは近年のジャズ/フュージョン作に限っても、ジャック・ディジョネット、グレゴア・マレイ、マイルス・エスパニョール、ソフィー・ミルマン、ポール・テイラーと、急速に市場で存在感を増しており、また1人、著名ミュージシャンを傘下に収めたとのイメージを抱く。

 レーベルの移籍と共に、共演者を刷新し、新しいコンセプトで制作に臨んだ。カサンドラの音楽には欠かせないレギュラー・メンバーのマーヴィン・スーウェル(g)や、ジェイソン・モラン、ロニー・プラキシコ、レジナルド・ヴィール、ハーリン・ライリーといった近作のメンバーは不参加。代わって最重要人物に浮上したのは、カサンドラと共同プロデューサーも兼任するギタリストのファビリッツィオ・ソッティ。日本では無名だが、グレゴア・マレイ、ミノ・シネル、サム・バーシュ(元アヴィシャイ・コーエン・トリオ)が参加したリーダー作『Inner Dance』を、2010年にeOne Musicからリリースしており、カサンドラの移籍にも一枚絡んでいる可能性は否定できない。他はシネルや連続参加のレカン・ババロラ(per)らで、アコースティック楽器を主体としたサウンドが特徴だ。

 前作が古いスタンダードやビートルズ曲を収めたスペインのライヴ&ニューオリンズ録音で、前々作『ラヴァリー』がラヴ・ソングの名曲集だったのに対し、本作はソッティとの共作を含めて10曲中7曲をカサンドラのオリジナルが占める。

 カサンドラがアコースティック・ギターを弾き歌う#1から順に聴き進めると、ドラムスを入れずに2名のパーカッションをリズムに充て、アコーディオンが絶妙な味付けをするカサンドラの、音作りの意図が浮き彫りになる。環境が変わってもカサンドラはやはりカサンドラなのだが、ボッサ風の#5では、ソフト・タッチの歌唱が印象的だ。唯一のカヴァー曲にカンツォーネの名曲#3を選んだのは、パートナーのソッティがイタリアンだからか、あるいは録音地がフィレンツェだからか。原曲のナポリ民謡に従ってナポリ語で歌ったのは、カサンドラの新境地と言えよう。

 今年3月には出身地のミシシッピー州ジャクソンに開店したライヴ・ハウスをプロデユース。キャリアを重ねても守りに入らない姿勢に共感できる秀作だ。

【収録曲一覧】
1. Red Guitar
2. No More Blues
3. O Sole Mio
4. Deep Blue
5. Almost Twelve
6. Passion
7. When Will See You Again
8. Another Country
9. Letting You Go
10. Olomuroro

カサンドラ・ウィルソン:Cassandra Wilson(vo,ac-g)(allmusic.comへリンクします)
ファビリッツィオ・ソッティ:Fabrizio Sotti(g)
ユリエン・ラブロ:Julien Labro(accordion)
ミノ・シネル:Mino Cinelu(perc)

2012年作品

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