
20世紀を代表する振付家モーリス・ベジャール(1927~2007)の代表作「第九交響曲」の制作過程に密着したドキュメンタリーが今月公開される。ベートーベンとベジャールは現代に何を訴えるのか。アランチャ・アギーレ監督に聞く。
今年も町中にベートーベンの「第九」が鳴り響く季節がやって来る。多くの日本人が愛する壮大なクラシック音楽を、もし「見る」ことができたら──。
それを可能にしたのが、天才振付師ベジャールだ。「人類は皆兄弟」をテーマに、80人のダンサー、オーケストラ、ソロ歌手、合唱団の総勢350人という壮大なスケールでベートーベンの「交響曲第九番」をバレエにした。
この豪華なステージを舞台裏まで見せてくれるのが、今回上映されるドキュメンタリー映画「ダンシング・ベートーヴェン」だ。
メガホンを取ったのは、映画「ベジャール、そしてバレエはつづく」(2009年)でベジャール亡き後のモーリス・ベジャール・バレエ団(BBL)の失意と復活の日々をつづったアランチャ・アギーレ監督だ。実は監督、10代の頃にベジャールがつくったバレエ学校「ムードラ」の生徒だった。直接やり取りする機会はなかったものの、生徒だったからこそ彼の「観察者」になれたと話す。