

正直言って、今回、ご紹介するセルジオ・メンデスのアルバムをぜんぶ聴いているわけではない。1961年にレコードデビューしてから今まで第一線で活躍しているのだから、その量も半端ではない。あるサイトに、ディスコ・グラフィーが掲載してあったが、オリジナル・アルバムだけで、30枚以上が紹介されていた。しかし、わたしと彼との出会いは、66年、ラジオから流れてきた「マシュ・ケ・ナダ」を聴いた時だ。あの時の感動は今も忘れられない。そして、次に聴こえてきたのが「デイ・トリッパー」だった。
もちろん、65年シングルで発売されたビートルズのオリジナルは知っていた。こちらも、言うまでもなく最高だ。しかし、セルジオ・メンデスの演奏も、そのラテン・フレイバーあふれるリズムや女性ボーカルが、なんともオシャレで、新しい音を求めて、時間さえあればラジオにかじりついていた少年のわたしには、直球で入ってきた。「カッコエエ!」(北関東出身の筆者ですが、こういう時は、なぜか関西弁?)「なんじゃ、こりゃ!」という感じでしょうか。
これが、ブラジル音楽との出会いということになったわけだ。
そして、購入したのが<セルジオ・メンデスとブラジル’66「ダブルデラックス」>2枚組LP全24曲収録。いわゆる当時はやった2枚組みベスト盤というやつ。そこで、他のビートルズ・カバーも聴くことになっていく。「ウィズ・ア・リトル・ヘルプ・・」「フール・オン・ザ・ヒル」「ノルウェーの森」などだ。それから、サイモンとガーファンクルの「スカーボロー・フェア」なども、オリジナルとは違う魅力を見つけたという感じだった。
そして、バート・バカラックの曲や、アントニオ・カルロス・ジョビン、ジョアン・ジルベルトなどボサノバの曲も知っていくことになる。
世界には、もっとたくさん、自分のまだ知らない素晴らしい音楽があるんだ、と気づいたわけだ。そのひとつのきっかけに、70年の大阪万国博覧会があるかもしれない。今、そのときの来日アーティストを調べてみると、ポール・マッカートニーのプロデュースでデビューしたメリー・ホプキン。ポルトガルのファドの女王アマリア・ロドリゲス、マレーネ・ディートリッヒ、シャンソンのジルベール・ベコーやダリダ、ラヴィ・シャンカール、もちろん、ジャズ・フェスやキューバン・カーニバルなど、たくさんのアーティストが参加する催し物も数多く催された。そして、これら有名アーティストが来日するたびに、テレビのニュースが報道したわけだ。このとき、わたしはまだ14歳。万博会場には連れて行ってもらったが、コンサートを聞くことは、かなわなかった。しかし、その後、アマリア・ロドリゲスやデートリッヒを聴いたりするようになる背景は、このときにできたのではないかと思っている。
世界の音楽に目を開くきっかけを作ってくれたセルジオ・メンデス。今、聴きいても、粋だな、と感じる。70才を超えたというが、彼の素晴らしい音楽を、聴きに行きたいと思っている。[次回4/10(水)更新予定]
■公演情報は、こちら
●大阪公演
http://www.billboard-live.com/pg/shop/show/index.php?mode=detail1&event=7988&shop=2
●東京公演
http://www.billboard-live.com/pg/shop/show/index.php?mode=detail1&event=7989&shop=1