三浦:高齢化もシングルのあり方に影響してくるでしょうね。「人生50年」のときは20歳で結婚して30年で人生も終わりでしたが、今はそこからさらに30年、40年あるわけです。すると40歳や50歳で結婚しても、40年前後の人生がある。その人生を二人で生きようというカップルもいっぱい出てくるでしょう。
酒井:確かに人生が長すぎるので、20代や30代前半で結婚した人はセックスレスとか夫婦の実質的崩壊とか別の問題に悩んでいます。人生前半と後半に分けて、カップルも「人生二毛作」ぐらいでないと、やっていけないのかもしれません。
三浦:60歳ぐらいになって、正規雇用と非正規雇用の立場の逆転が起きる可能性すらある。年収600万円の正社員で、結婚して、奥さんは専業主婦で家を買って子供2人を私立に入れて、お金のことで「ひーひー」言って、定年のころにはぼろぼろになっている人がいる。
一方、ずっと非正規で年収300万円ぐらいだったけど、50歳を過ぎてから良い人と出会って、二人とも非正規なんだが合わせて600万円ぐらいの収入で70歳まで生き生き暮らしている、という皮肉な逆転があるかもしれない。団塊ジュニア(現在39~46歳くらい)が50歳を過ぎると、そういう変化がはっきり見えてくると思いますね。
酒井:それこそ家族形態の多様化に合わせて、幸せも多様化するということだと思います。いずれにしても、これからの世の中、家族の在り方は「何でもあり」。こうあるべきだとか、これが普通という感覚はなくなっていくでしょう。いろいろな形態のカップルが出てこないと、少子化なども解決しないのでは。
三浦:人生が長くなっていくにつれて、シングルのあり方、シングルに対する考え方も変わってくるということですね。今までは若いときだけがシングルだったのが、これだけ中高年シングルが増えてくると、新しいシングル像、シングルの新しい生き方が必要になります。世の中全体として、それを模索していくべきです。
(構成/本誌・首藤由之)
※週刊朝日 2017年12月8日号