スラヴ・トゥ・ザ・リズム/ファーマーズ・マーケット
スラヴ・トゥ・ザ・リズム/ファーマーズ・マーケット

オスロからのおすすめ盤
Slav To The Rhythm / Farmers Market (Division Records)

 7月4日から7日まで開催されたノルウェーの《コングスベルク・ジャズ・フェスティヴァル》に行ってきた。2003年、2011年に続く3度目の取材である。

 20以上のジャズ・フェスが活況を呈する同国で、2番目に長い歴史を誇る同祭は、現在の代表的アーティストと新人を紹介するショーケース的なプログラムを提供。ノルウェーの最新ジャズ・シーンをチェックするには最適のフェス、との評価が定着している。

 成田を発ち、アムステルダム経由でいつも通り夕方にオスロに到着。一泊した翌日午後に、バスでコングスベルクへ向かったのだが、その前にオスロの中心的なジャズ・スポットである“Bare Jazz”に立ち寄った。日本では入手できない新譜をチェックするために、必ず訪れるショップだ。運良く店主でテナー奏者のボディル・ニスカがいたので、オススメ盤をピックアップしてもらう。そこで購入したのが、このファーマーズ・マーケットの新作というわけだ。

 1991年にスティアン・カシュテンセンの呼びかけでクインテットを結成。ジャズ、ロック、ポップス、ブルガリア伝統音楽を取り入れたハイブリッドなサウンドで、これまで4枚のアルバムをリリース。多彩なノルウェーのシーンにあって、独自のポジションを築いてきた。ノルウェー・ラジオ・オーケストラ、スタバンゲル交響楽団、トロンハイム交響楽団、クリスティアンサン交響楽団といったノルウェーのオーケストラとの共演経験も豊富で、《モルデ・ジャズ祭》ではマイケル・ブレッカーに認められ共演ステージが実現した実績もある。昨年の《東京JAZZ 2011》で野外ステージに出演し、観客を沸かせたたことも記憶に新しい。

 通算5枚目となる新作は、まずファーマーズ・マーケットがさらにパワーアップしたことを印象付ける。変拍子と東欧音楽の旋律を盛り込んでエネルギッシュに仕立てた#1からそれは顕著。サックス、ギター、鍵盤の絡みには、亡きジョー・ザヴィヌルが晩年まで追求した音楽の発展形さえ認められて興味深い。ハードロックとワールドミュージックが融合した好例を示す#2、フィリップ・シメオノフ(cl)の技巧が光る#3、ブルガリアの女性コーラスを起用して、伝統への意識を強くアピールした#5と、バンド+ゲストで多彩なサウンドとバンドのパワーアップを目論んだコンセプトが奏功している。リーダー格のスティアンを昨年2月に北極で観ていて、ノルウェー語のMCで終始観客を笑わせていた光景に複雑な思いを抱いた。彼らの本領を体感できるのは、現地でのノルウェー語を解した状況だとわかった上で、これは彼らの魅力を十分に楽しめる作品だと言える。

【収録曲一覧】
1. Slav To The Rhythm
2. You’re The Prototypical
3. Friend
4. Dusty Traditions
5. Replace
6. Shiny Happy Gizmos
7. Old Stuff Still Does The Trick
8. It’s Not Always True
9. Machines Rule
10. And Thus
11. Man Is Ancient History

スティアン・カシュテンセン:Stian Carstensen(g,banjo,el-sitar,ocarina,accordion,vo)(allmusic.comへリンクします)
ニルス=オラフ・ヨハンセン:Nils-Olav Johansen(g,vo)
ヤーレ・ヴェスペスタ:Jarle Vespestad(ds)

2010~2012年録音