腸には100兆とも1千兆ともいわれる数の腸内細菌がすみつき、女性で重さ1キロ、男性は1.5キロほどの細菌がいると言われている。上符院長によると、集中力や生産性を上げるドーパミンや、うつ病の薬の成分にもなるセロトニンは腸内細菌でつくられるという。なるほど、「腹黒い」や「腹の虫がおさまらない」といった、腸と感情にまつわる言葉やことわざが昔からあるのも腹落ちする。「腸が健康な方はメンタルも安定しています」と上符院長。「腸は第二の脳」ではなく、もはや「脳は第二の腸」と言っても過言ではなさそうだ。

 近年は、消化されたものを体内にため込んで肥満の原因になっている菌や、逆に痩せる菌がいることがわかっている。そして将来は、肥満にならぬように腸内を改善する手っ取り早い方法が出てくるのでは、と期待値が上がる。

 東京工業大生命理工学院の山田拓司准教授は、「腸内細菌が注目されるようになったきっかけは10年ほど前」と話す。

 腸内環境の研究がさらに進めば、20~30年かけてゆっくりと進行する大腸がんの予防にも有効だと考えている。興味深いのは、腸がそれぞれ保持する個人情報の特異性の高さだ。双子でも異なるという。

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