「自分の役目はまず経営を安定させること。商品を販売する会社にとってはお客様に商品を買ってもらい、喜んでもらうのが一番で、サッカークラブなら試合に勝利してサポーターに勇気を与えるのが大切。どちらも人を幸せにすることがミッション。そういう観点に立てば、ジャパネットもV・ファーレンも運営の理念は変わりません」
一時は選手の給料未払いまでが心配されていただけに、経営の安定がチームに落ち着きをもたらしたのは言うまでもない。また、高田氏は時間の許す限り、試合や練習場などに足を運び、現場とのコミュニケーションを密に取ってきたとされる。
選手からは、こんな声が漏れてくる。
「社長は練習や試合に、よく来てくれています。選手もやっぱり人間ですから、社長が頑張ってくれているなら僕たちも頑張ろうって気持ちにはなりますよね。(高田社長就任後に成績が上がったのは)たまたまのような気もしますが、ちょっとしたことで運気は変わるもの。社長は何か持っている人なのかも(笑)」
昨年度の予算を見ても長崎は約7億5千万円と、昇格を争ったライバルの名古屋(約47億円)、福岡(約18億円)を大きく下回り、この数字はJ2でも下から数えたほうが早い。予算規模の小ささが示すとおり、長崎には日本代表経験者やスター選手は不在。40節消化時点で11ゴールとチーム内得点王のスペイン人FWファンマにしても、リーグの得点ランキングでは17位タイと、突出した力を発揮しているわけではない。
では、なぜここまで勝ち点を積み重ねてこられたのか。就任5年目を迎えた元日本代表FWの高木琢也監督がチームに求めたのは、ハードワークをベースにした徹底した全員攻撃、全員守備。試合では11人全員が、愚直なまでに90分間走り切り、シーズン後半戦に限っては13勝のうち9勝が1点差の勝利としぶとく接戦をモノにしてきた。J2の上位10チームの顔ぶれを見ると、長崎を除くすべてのチームが過去J1を経験しているなか、唯一J1未経験ながら、終盤にきて12試合無敗とクラブ記録を塗り替える奮闘ぶりだ。
高田氏は、こう話す。
「とにかく県民が寝ても覚めても気になってしまうようなクラブにしたい」