来日中もどこか表情が晴れないトランプ大統領 =代表撮影
来日中もどこか表情が晴れないトランプ大統領 =代表撮影
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 安倍晋三首相が貢ぎ外交でどんなに米国と蜜月を築いても、相手方のトランプ大統領がいつまで大統領でいられるのか、という問題が実はある。

 トランプ氏の支持率は10月末時点で33%と、就任以来最低を更新。就任時から人事をめぐる混乱が続き、今でも政府高官ポストの多くが空席のままだ。

 米国でロビー活動を展開するシンクタンク「新外交イニシアティブ」の猿田佐世事務局長がこう語る。

「高官が不在の部署ではトランプ氏による政治任用でなく、下からのたたき上げの職員が代行して実務を回していますが、重要な決定や路線変更はできない状態。今回のトランプ訪日も、北朝鮮問題に対して日米の結束を世界に示すこと以上の具体的なテーマが見えてきません」

 そしてトランプ氏を追い詰めているのが「ロシア疑惑」だ。昨年の大統領選の際、ロシア側と共謀して選挙に介入した疑いが持たれているのだ。10月30日には、マナフォート元選対本部長らトランプ陣営幹部3人が起訴されたことが公表された。その一人で外交顧問を務めたパパドポロス氏は刑罰を軽減する代わりに捜査当局への情報提供に協力する「司法取引」に応じたと報じられており、トランプ氏の立場はますます危うくなっている。米国政治に詳しいジャーナリストの矢部武氏はこう語る。

「トランプ氏が4年の任期を全うできる可能性は低いと見ています。『ロシア疑惑』の捜査にあたるマラー特別検察官は、すでに有効な証拠を入手しているとみられる。今後の捜査の進展次第では、議会で大統領の弾劾が始まる。中間選挙を秋に控えた来年春から夏にかけて、動きが本格化すると思われます」

 大統領の弾劾手続きは、下院で過半数の賛成を得ると弾劾訴追が決まり、上院で開かれる弾劾裁判で3分の2以上の賛成があると、大統領の罷免が決まる。現在は両院とも共和党が多数派だが、共和党議員の一部が中間選挙をトランプ氏では戦えないと判断し、弾劾賛成に回る可能性がある。

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