フジイさんの取り組みは『ソーラー女子は電気代0円で生活してます!』にまとめられている。
西武線飯能駅から車で約30分。埼玉県入間川の源流に位置する旧名栗村の下田家は、「東電フリー」を実践して5年目に突入した。夫の亘さん(58)、妻の洋子さん(53)、双子のさちさん、ゆきさん(20)の4人暮らしで、暖房、炊事、入浴と、必要な熱量のほとんどすべてを薪炭で得る。山間地だけに夏は涼しくてエアコン要らず。冷たい湧き水のお陰で冷蔵庫も必要ない。
建坪15坪の木造住宅は、棟上げ、屋根工事までは業者に任せ、内外装工事は自分たちで、1年半かけて仕上げた。当初から「無電化住宅」を考えていたので、開口部を広く取るなど採光に配慮。必要な電力は最小限にとどめ、いわゆる「白物家電」は洗濯用の脱水機だけ。1.2ワットのLED電球8個と、大工仕事に使う電動工具、スマホの充電などはソーラー発電で賄う。あまりの徹底ぶりに、娘のさちさんからはこんな本音も。
「環境にも健康にもいいのはわかりますが、トイレは臭いし……。両親はいいでしょうが、私はもう少し便利な暮らしがしたいです」
実は下田家は以前、埼玉県内のごく普通の住宅街で「オール電化」の家に住んでいた。
「25年前に建てた家で、ソーラー設備付きなので電気料金が0円と安上がりでしたが、電磁波について調べるうちに、幼い子供への影響が怖くなりました」
さらに3.11後の計画停電で、オール電化の脆さを痛感した。給湯器が動かず風呂が使えない、IHなので調理もできないなど、「まるっきりなにもできなかった」という。
2人の娘が飯能市の私立中学に進学するのを機に、電力に頼らない家を求めて近隣で古民家を探した。しかし売りに出ている物件はなく、ゼロから理想の住宅を建てることになった。
下田家のエネルギーの大半を担うのが、薪ストーブだ。ガスや灯油も使用しないので、災害時には特に強みを発揮する。しかし一方で膨大な薪が必要だ。