夫:リポーターを始めたばかりのころ、夜の付き合いも重要だと思って無理して朝まで飲み歩いていたんです。でも明け方、家に帰ると彼女が怒って家に入れてくれない。
妻:ドアチェーンの隙間から情けない声で「入れてくださ~い」って。
夫:グデングデンの状態で家に入ると、まだ幼かった娘が顔に乗ってくる。2人からの制裁が待ってるわけです。そのとき「あなたは一体、何をしてるの」と彼女に聞かれた。「輪の中に入るための努力をしてるんだ」と言うと、「あなたはそんなこと好きじゃないでしょ?」と。これにはハッとしました。そう、僕はもともと外で楽しく飲めるようなタイプじゃないんです。
――飲みに行くときは1週間前に申告する、全国どこにいても基本外泊はせず家に帰る──妻が決めたルールはなかなか厳しい。ゆえに“恐妻家”と言われることも多いが、目の前の二人の関係はとてもおだやかだ。
夫:結局、僕もそれで自己管理ができましたしね。それに僕は友達もいないし、外でのことを全部家に持ち込むタイプ。話し相手も彼女しかいないんですよ。
妻:世間では“鬼嫁”のイメージがあるみたいですけど、違うんですよ(笑)。
夫:彼女はイエス・ノーがハッキリしているんです。いやなことはいや、できないことはできない、とキッパリ言う。
妻:でも娘もこの性格を引き継いじゃって、人間関係で苦労しているみたい。
夫:いまの世の中は“無難”が主流だけど、ウチの2人は違うんですよ。僕にはそれはできない。処世術と人を蹴落とす戦いばかりの世界で働いて、家に帰って彼女のような純粋な人間がいてくれるとホッとするんです。仕事の愚痴も散々、聞いてもらってきました。