クルーが見本を示しながら、作業手順を一つずつ丁寧に教えた。参加者の主婦は当初緊張していたが、途中から笑顔もこぼれた。

 体験した東京都杉並区の54歳女性は、大学生の息子と娘がいる。出産で仕事を辞めたが、子育てが一段落し、復帰を考えていたという。久しぶりの仕事は不安だったようで、「どんな仕事をするかがわかり、参加してよかった」と話した。

 マクドナルドの“主婦クルー”は、全体の約2割。店長の赤井麻友さん(35)は、娘の出産をはさんで約17年働いている。「時短で働いて出産した人が身近にいて、女性が働きやすい雰囲気だった」という。3歳になった娘を育てながら、現在は自らも時短で働く。「こうした(職場環境の)強みを積極的にアピールしようと思った」と長敦子人事本部長は体験会のねらいを話す。

 働きたいと思いながらも求職活動をしていない女性は、16年に274万人(労働力調査)。求職活動をしない理由で最も多いのは「出産・育児のため」だった。主婦を職場に招くには、こうした課題を企業側がどう解決するかが問われる。

 商業施設を運営するイオンモールは、「イオンゆめみらい保育園」を施設内に設置している。14年に千葉市の幕張新都心の店で開園したのを皮切りに、グループ全体で計15カ所に設けた。

 店のある都道府県で、20年までに1カ所以上の設置をめざす。モール内のアパレル店は20~30代の若い女性従業員が多いため、保育園で出産後の職場復帰を支えるねらいだ。

 開園日はモールの営業日に合わせ、365日朝7時~夜10時。遅番や土日に働く従業員も使いやすい。保育園がおむつの準備や着替えの洗濯などを担ってくれるため、利用者は手ぶらで送り迎えできる。

 保育園立ち上げの担当者の東英衣子さんは「おむつに名前を書いて必要枚数を毎日持っていくのは大変。自分の経験から、これはなくそうと思った」と話す。

 ファミリーマートも10万人の主婦の採用方針を掲げ、保育園開園を今後予定している。女性が働きやすい職場づくりの競争は続く。(本誌・大崎百紀、吉崎洋夫)

週刊朝日 2017年10月13日号

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