厨房はかつて4~5人いたが、今や2~3人。熱気の中で重い中華鍋を振るイメージは裏切られ、店長は「汗もかきませんね」と涼しげだ。野菜は工場でカットされているので包丁も使わず、調理人の作業は麺を菜箸でほぐす程度だった。

 リンガーハットは「マンパワーからマシンパワー」と掲げて自動化を進めており、9割の店で自動調理機を導入した。シニアや女性も働きやすくなり、広報担当の石田修啓さんは「採用した人が長く働いてくれる」という。

 人手不足のなか、企業は元気なシニアに熱視線を送る。総務省「労働力調査」によると、労働力人口に占める65歳以上の高齢者の比率は2016年に約12%。10年前の06年は約8%で、年々伸びている。

 ディスカウントストアのドン・キホーテは、開店前に商品陳列などの準備をする「ライジングクルー」として、シニアを積極的に採用している。早起きが苦にならない人の生活スタイルに合った働き方。「短時間、少ない日数で働きたい」との声が増えており、1日2時間・週2日から働けるようにした。学生が集まりにくい時間だけに、シニアの力が重宝されている。

 モスバーガーは、直営店で働くスタッフの5%がシニア層。半数を占める店さえあり、今や「モスジーバー(爺婆)」と親しまれる存在にまでなった。

 高校生以上ならば、募集時の年齢制限はなし。今春に退職したパート女性は、84歳まで厨房で週5日働いていた。野菜の仕込みなど家事経験をいかせる職場のため、長く働きやすいようだ。モスフードサービス社長室の金田泰明さんは「シニアの働く職場は、シニア客が利用しやすい」と話す。

 日本マクドナルドが目をつけているのは、主婦パワー。9月から、主婦向けのクルー体験会を始めた。

 東京都内であった体験会では、50代の女性2人が若手クルーと一緒にハンバーガーをつくっていた。

「オニオンはこれくらいの量です」「チーズは紙と平行にのせます」「お肉はこう持つと破れやすいので、気をつけてください」

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