カトリーヌあやこ/漫画家&TVウォッチャー。「週刊ザテレビジョン」でイラストコラム「すちゃらかTV!」を連載中。著書にフィギュアスケートルポ漫画「フィギュアおばかさん」(新書館)など。
カトリーヌあやこ/漫画家&TVウォッチャー。「週刊ザテレビジョン」でイラストコラム「すちゃらかTV!」を連載中。著書にフィギュアスケートルポ漫画「フィギュアおばかさん」(新書館)など。
この記事の写真をすべて見る
(c)カトリーヌあやこ
(c)カトリーヌあやこ

 漫画家&TVウォッチャーのカトリーヌあやこ氏は、「土曜ドラマ 植木等とのぼせもん」(NHK総合 20:15~)に違和感があると指摘する。

【イラストはこちら】

*  *  *

 植木等(山本耕史)と小松政夫(志尊淳)の師弟関係を中心に、クレージーキャッツ全盛期を描いた本作。冒頭、小松本人がお得意の淀川長治のモノマネで登場する。以前この枠で放送された「トットてれび」の黒柳徹子に続く、昭和のテレビ懐古シリーズ(?)だ。

 でもね、徹子に比べてこの植木、どうもスッと入ってこない。なんだろう、歌声なんてびっくりするほどそっくりだし、動きや話し方も相当研究したと思われる。でも顔見ると石田三成(「真田丸」)でしょ、嫁は堀北真希でしょと、思わずわきおこるこの違和感。

 そもそも徹子の場合は元からバージョンが豊富だ。清水ミチコ版、友近版、「徹子の部屋」に出るたびにモノマネやらされる天海祐希版などなど。すでにキティちゃん並みに量産されているから、満島ひかりバージョンだって、こっちも受け入れ準備万端よ。

 しかし植木。あまり見たことなかった植木のモノマネ。いきなり山本バージョン提示されても、なかなか慣れずにとまどうばかりだ。さらに小松役の志尊が、これまた今どきの小顔イケメン。キラッキラした瞳で植木のこと「親父さん!」なんて呼んでるの見ると、後に「悪りーね、悪りーね、ワリーネ・デートリッヒ」なんて味わい深いギャグかますとは、とてもじゃないけど思えない。というか、見た目全然昭和じゃない。

 その点、植木の父親役で伊東四朗が出てきた瞬間の安定感たるや。「ど~も~、ジジィで~す」なんてさらりと言うだけで、醸し出されるあの時代の賑わい。そして有無を言わせぬ顔面力。これが昭和と平成の違いなのか、どーしてどーしてなの、おせーて!

 近頃、動画配信サービスNetflixのCMで、明石家さんまが語っていること。「俺ら、テレビはすごいもんやと思ってやりすぎてるから。今の子たちはテレビをすごいもんと思って見てないから」

 かつてテレビの中の人が光り輝く「すごいもん」に見えた時代。昭和から平成、テレビの向こう側とこちら側の距離はどんどん縮まって、もはや地続き状態。それでも「すごいもん」時代の人たちは、徹子をはじめ今でも佇まいがまったく違う。懐古ドラマもいいんだけど、元気に語れるうちに「すごいもん」の芸談番組など後世のために、どーかひとつよろしく。

週刊朝日 2017年10月13日号