わが子に読み聞かせをしたいと考えたとき、まず悩むのが絵本選びだ。最近は「失敗したくない」と慎重になる親も少なくないのだとか。「3歳までに1万冊」の絵本の読み聞かせを実践した経験があり、4人の子どもが東大理IIIに合格した佐藤亮子さんが新米ママさんだった当時、どのように絵本を選んだのだろうか。
「私も最初は、書店にあるたくさんの絵本の中からどれを選べばいいかわかりませんでした。そこで、『くもんのすいせん図書一覧表』を参考にしました」
これは、国語教材のレベルごとに50冊の推薦図書を紹介したもの。佐藤さんは、まず一覧表にある200冊を購入して、それを足がかりに絵本の世界を広げていった。シリーズもので1冊気に入れば、すべてそろえたり、作家の別の作品を購入したりした。
長男が4歳、次男が3歳、三男が1歳のころからは、毎週、図書館にも通うようになった。長女が生まれてからは、家族6人全員で図書館に出かけ、1人6冊までの制限を最大に生かして、佐藤家で計36冊を毎週借りていた。
「次第に目が肥えて、コツがわかってきました。最初は自分に合わない本を手にすることや、良さがすぐに理解できない本もありました。試行錯誤は大事です。失敗を恐れないでほしいと思います」
参考までに、4人の子どもに読み聞かせた作品から、佐藤さんが薦める絵本100冊を表にした。乳児から小学校低学年までの子どもを対象にしている。中でも、特に心に残っている本は次の3冊。
▼『こんにちは』……長男が1歳半のときに次男が生まれ、赤ちゃん返りをした長男にせがまれて読んだ。「お母さん大好き、といった内容の絵本です。赤ちゃんにお母さんをとられたような感じがして、寂しかったんでしょうね。寝る前に読んだら、『もう一回』って何度も言うんです。読みながら正の字でカウントしていたら、長男が眠るまで一晩で54回も同じ本を読み続けていました」
▼『めっきらもっきら どおんどん』……お化けが出てくるファンタジー。「お化けが出たら、子どもたちはクモの子を散らすように逃げるんです。そして、柱の陰からおそるおそる見ています。だんだん近づいてきて、お化けが出たらまた逃げる。その様子がとってもかわいかったですね」
▼『そして、トンキーもしんだ』……戦時中の上野動物園の象の話。「かわいそうで、号泣してしまいました。息子が5歳、4歳、2歳のときですが、3人とも、私をちゃかすことはなく、カチンと固まり、気持ちを察してじっと絵本のほうを見つめていました。親思いの優しい子どもたちだな、ってうれしく思いました」