この記事の写真をすべて見る
ディジー・ガレスピー&ザ・ダブル・シックス・オブ・パリ
Jazz Long Playing

 オルガンというのは非常に使い勝手の良い楽器です、多くは左手でベースラインを弾くことで、編成によってはベーシストが不要であるということ。ジャズはロックに比べてステージ上の様式美よりも個々の演奏に魅力を求められますが、演奏する場所によって非常にミニマムな編成で望まなければならない場合もあります。それは鍵盤(ピアノやエレピなど)とベースを兼ねていることから、例えばピアノとギターのデュオやドラムとベースのデュオ等に比べれば「シンガーとオルガンのデュオ」の場合多少ジャズに親しみがない方から観た場合でも一定のポピュリズムを獲得できる。

 一人二役。リズム設定も担っているので+αを計算できる。場合によってはピアノ同様ソロライブも充分楽しめる。ジミー?スミスという規格外のジャズマンも居ますが往々にして裏方のイメージもあったりなかったり。そこでこのエディー・ルイス。'60年初頭にはクリスチーネ・ルグランも在籍したダブル・シックス・オブ・パリス(ディジー・ガレスピーとの共演盤が有名)というボーカル・グループに参加した後'64年にこの最初のアルバムを発表します。

 マルティニーク出身(諸説あり)の声楽家とピアニストの両親に育ち幼少の頃から音楽教育を受けていたエリートだそうで、ダニエル?ユメール(d)やジャン・ルック・ポンティ(v)等との交流を深め(ちなみにジャン・ルック・ポンティの傑作アルバム『Jazz Long Playing』も'64年録音)同年にはフランスジャズ界最高の栄誉とされるジャンゴ・ラインハルト賞も受賞しているそうです。
'90年以降にも精力的な活動をされているようですが、なにぶん不勉強でこの'60年代のレコードと同じ時代の数枚の7インチEPしか手元にないので分かりません。アルバム中9曲中2曲がボーカル、3曲はボーカリーズといった雰囲気のスキャット・チューンなのでしかしそれはそもそもの出自なのでお手のものといった風格です。いわゆる<モッド?ジャズ>(←ジャズの世界にこんな区分はないですね)イギリスで絶大な人気を誇ったジャズ・ロック・グループ<ザ・ペドラーズ>のような、ソウルジャズとシャッフルした16ビートを基調にしたご機嫌な曲が並んでいます。 ライブ音源を追加収録したCDアルバムも出ているようなのですが…。いずれにしてもフュージョン~新主流派~音響まで玉石混淆なジャズの世界。こういったタイプのジャズもまた再評価されてもいいんじゃないかと思います。これは思い込みかも知れませんが、この時代のエディ・ルイスのスタイルをそのままリロードし再演できるようなバンドがあれば「FUJI ROCK FESTIVAL」に出演しても全く違和感がないと思うのだけれど。

[AERA最新号はこちら]