広告会社でマーケティングをした結果、荒川氏による結婚しない男の定義はこうだ。「束縛されず自由に過ごしたい」「一人で過ごす時間を確保したい」「誰かに頼らず生きていける」。荒川氏はこう解説を続ける。
「気楽な地位を好み、一人の時間を大切にする。一方で、仕事面で人に認められたい承認欲求はある。趣味でも同じような達成感を求める人が多い。自分の好きなことをとことん追求したい。映画でもスポーツでも読書でも一人で十分楽しめるのです。野球などの球技も含め集団でつるむのを好まないのも大きな特徴です。彼女や親友がいないわけでもない。本質的な部分でも、既婚者が家族のために頑張って働いているのと同様に、独身者も働いている。既婚者同様に普通に子供が欲しいと思う面もある」
「おひとりさま」ブームを生んだマーケティング評論家、牛窪恵氏は「今は男損時代。結婚しても小遣い3万円台が主流の調査結果もあり、お金や時間が自由にならない。周りの既婚者も幸せそうに見えないのでしょう。結婚のメリットは子供ぐらいに思えて、趣味などを犠牲にするのも馬鹿らしい」と語った上で、「仕事が安定しない状態で結婚するのは無責任だと思っている半面、仕事に真面目で古い男の概念も持っていて、無責任には結婚できないと思っている男性が多いのではないでしょうか」と分析する。
一方で、かつて「お見合い歴30回」と公言し結婚できない女性の代名詞にされていたエッセイスト、阿川佐和子氏が今年5月、63歳で晩婚した例を挙げ、こう指摘する。
「国の施策として、遅くても結婚できる時代にしないといけないとも思います。60歳を過ぎて、『人生って何なのか?』と感じやすい時代になっていて、一人でも楽しめない社会になってしまっては悲惨です」
前出のAさんは米・コロンビア大学大学院に留学中の2001年9月、米同時多発テロに遭遇し、複雑な心境をこう語った。
「人生の成功は富にあると考える風潮が蔓延しているアメリカ社会を実感していた矢先の衝撃的な出来事でした。物理的な我流より、連帯感や人とつながっていたいという意識が植えつけられました。だから、母親が亡くなったら、一人で生きる張りを失ってしまうかもしれないと、ふと感じる瞬間も正直あります。ですので、60代以降にあえて所帯を持つことを考えてみてもいいかなとも思います」