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 近年にはリリース作品も届きウエスト・コーストや中間派が好きなタイプのジャズ・ファンには知られたスウェーデンの重鎮サックス/クラリネット奏者である。

「ウエスト・コースト/中間派」と記述させて頂いたが、それは近年の作品に限ったことであり、50年代はアート・ファーマーやクリフォード・ブラウン。チャーリー・パーカーとはスウェーデンでツアー共演したことがあるというバリバリのハードバッパーでもあった。しかしこの2枚のEPはスウェーデン国内盤で共演しているミュージシャンもドメスティックに留めている。僕らが好んでプレイする「Topsy Theme」を機知に富んだマンボ調で演奏しているがずばりその曲が目的で入手した。

 2バージョン共にアルトでのプレイであるがまずは57年録音のカルテットでのテイクを紹介。この時期の北欧RCAはリリースが活発でこういったスプリット盤(名義の異なるリーダー作もしくはコンボによるAB面をシェアしての共作)含め相当数の枚数が確認されているが、アルネ関連だけでも4枚あるので、所謂マイルスのマラソン・セッション的な録音だったのかな。

 中でもこの「Topsy Theme」はキレがありアルネの持ち味、バッパーでありながらアートペッパー的なメロディアスでコンポーズされたような軽快なソロを聴くことができる。音の分離の良さはこの時期のRCA録音の特徴で、日本でいえば60年代のキングレコードのようなあきらかに「その他」とは違う音質を持っている。エンジニアの腕なのかなあ、名前はちょっと勉強不足で分からないけど。ちなみに片面の「EXPRESSENS ELITORKESTER 1957」も聴き所あり、ラス・ガリン(ts)オキ・ペルソン(tb)ルネ・グスタフソン(g)にアルネも加わってさながらスウェーデン・オールスターズのようなメンバー構成で「I Got Rhythm」などが収録されている。

 さてもう一枚の「Topsy Theme」といえば。こちらはBerbenというレーベルからの翌58年録音。『Orcheater』(オーケストラ)となっていますが正確にはセプテット。ジョージ・リデル(b)の参加がありますが、比較的当時の若い才能をフックアップしているイメージです。カルテット盤に比べテーマの多重奏に重きを置いてありソロも短くクラブフロアというよりもラウンジに適しています。収録曲の「Little white lies」はゴスタ・セセリウスによる外注アレンジ。こちらの方が演奏としては面白いのかなあ。しかし、こういった印刷技術によるジャケットの甘さ、これはチェコの国営レーベル作品でよく見かけるケースですが、う~ん、如何にも勿体ないなあ。

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