放送作家・鈴木おさむ氏の『週刊朝日』連載、『1970年代生まれの団ジュニたちへ』。今回は「坂上忍」をテーマに送る。

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 40代後半を過ぎて覚悟を決めた男は本当に強いなと思う。坂上忍さん。50歳。

 僕はワイドショーというジャンルの番組があまり好きではない。というのも、ここ数年、ワイドショー的な番組で芸人さんやタレントさんがコメンテーターをやっていることが多い。ワイドショーで取り上げられる人物がコメンテーターの知り合いが出ていることもある。コメンテーターをやっているからには、何かしら「斬る」ことをしないといけない。どうでもいい雰囲気の意見を言っていてはおもしろくないし、スタッフに期待された仕事をしているとは言えない。だからコメンテーターの顔を見ていると、息苦しそうでドキドキするのだ。

 ある芸人さんA君が僕に言った。とある情報ワイド番組に出ている彼は、出演して半年はどんなコメントを言っていいかわからなかった。半年たって自分の意見をハッキリと伝えるレギュラーが入ってきてからは、本番中、その人にばかりカンペで指示が出る。自分には何も指示が出なくなった。そこで思う、「自分は何のために出ているのだろう」と。お金をもらってコメンテーターとして出るからには、仕事をしなければいけない。そこで覚悟を決めて、自分の意見を伝えるようになった。その意見に、時折ネットや世間が騒ぐことがある。が、僕は、芸人として、このコメントがいいのかどうかを細かく考えるよりも、お金をもらって出ると覚悟を決めた彼は仕事をちゃんとしているなと思う。イヤだったら出なければいいのだから。

 
 で、覚悟と書いたが、坂上忍さん。俳優である坂上さんが「バイキング」という番組で、確実に司会者としての地位を築いた。僕はあの番組にいっさい関わってないので、非常に客観的に見ることができるのだが、ある週の放送を境に、坂上さんの覚悟が一気に見えた気がした。世の中で起きたことに対して、ハッキリした意見を伝える。テレビショーとして、世の中で起きたことに対して、視聴者が「おもしろい」と思う意見を言うことはとても勇気のあることである。

 おもしろいと不快って紙一重のところだ。だから、そのときの雰囲気が違うと、おもしろいはずの意見も勝手に不快に変換されて世の中にたたかれる。

 坂上さんはそのギリギリのところを、覚悟を決めて発言している。

 坂上さんは、根っからのギャンブラーなのだろう。「自分の人生を引き延ばそう」という気持ちがない気がする。40代後半でその打席に運良く立てたのだから、思い切り振ってやろうという覚悟が見える。それは、時に、知人・友人までをも傷つけることもある。失うこともたくさんあるかもしれない。それもわかっている。

 人は年を重ねてくると、その先が不安になり、今が見れなくなってくる気がする。だが、坂上さんは、50歳になり、「その先」ではなく「今」を見て仕事をする。

 40代後半から覚悟を決めた人は強い。今を見たい。今を見て仕事をしよう。

週刊朝日 2017年9月29日号