16億円あれば保育園を5カ所整備でき、30億円あれば小中学校1校分を改築できるという。区の担当者は「予想を超える影響額。ふるさと納税が今後さらに浸透し、税収が減り続けることが心配」という。
都市部は、地方と比べて魅力的な特産品が乏しい。そこで、地方に対抗して寄付を集めようとする自治体もある。
東京都中野区は昨年10月から、「特別区全国連携プロジェクト」で交流のある自治体の返礼品を用意して、寄付を集め始めた。
山梨県甲州市のウイスキーや、千葉県館山市での海釣り体験チケットなどが返礼品だ。区への寄付を増やすとともに、「地方経済の活性化にもつながる」という。区が集めた昨年度の寄付額は約2千万円。担当者は「返礼品を増やし、寄付額も今後増やしたい」と意気込む。
返礼品よりは、寄付者の「志」に訴える自治体も。
名古屋市は7月から、名古屋城天守閣の改築を目的とした通称「金シャチ募金」を始めた。名古屋城の天守閣は戦争で焼失し、戦後にコンクリートづくりで復元された。新たに改築するにあたり、焼失前の木造天守閣復元への協力を呼びかけて、寄付を募る。
開始から1カ月間で、約4700万円が集まった。名古屋城の年間無料入場券などを返礼品にしているが、返礼品目的の寄付は少ないと担当者はみる。
横浜市も4月から、ふるさと納税で集める「横浜サポーターズ寄附金」の対象事業を、従来の10から19に増やした。市内の動物園の動物を増やす費用や、市内の散策路へのベンチの設置費などに充てる。
動物園の事業に1万円以上寄付すると、園の年間パスポート(2千円相当)が贈られる。このほか、市は4月から1万円以上のすべての寄付に対し、市営バス・地下鉄の1日乗車券2枚分(1100円相当)を贈っている。
ふるさと納税は、税収が減った自治体に対し、減収分の75%を地方交付税で補塡するしくみがある。このため、多くの自治体は税収減のショックをやわらげられる。一方で、東京23区など地方交付税の不交付団体は打撃が特に大きい。