放送作家でコラムニストの山田美保子氏が楽屋の流行(はや)りモノを紹介する。今回は、目利きの女性が“お遣い物”として利用するフラワーショップ「レ ミルフォイユ」について。

*  *  *

 一口に有名人御用達と言っても、テレビ業界と、それ以外の業界とでは立ち回り先がビミョーに異なる。

 もっとも顕著なのは、利用する花屋さんだと思う。

 芸能人同士が送りあうのはコンサートの“ロビー花”としてのスタンド花。長期の舞台などには胡蝶蘭だ。

 でも会場によってはロビーに飾れない(飾らない)ところもあって、芸能プロダクション御用達の花店は、そうしたルールを熟知。木札やカードの文言や名前の大きさなども心得たものだ。

 一方、もう少し小ぶりのアレンジメントやブーケを得意としていて、それで有名な花店もある。

 主にレコード会社の女性プロモーターや、外資の化粧品会社の広報ウーマンら、目利きのギョーカイ女性が“お遣い物”として花を選ぶとき、かなりの確率で、包装紙にここのショップカードが留められている。「レ ミルフォイユ」だ。

 件(くだん)の女性たちは、日常で小粋な演出を任される機会がとても多い。いまはずいぶん減ってしまったけれど、彼女たちが仕切る発表会とかパーティーは、本当に洒落ている。

 
 私がピンチョスや企業とWネームのオーダーチョコを知ったのも、小さなパーティー専門のケータリング店の存在を知ったのも、そうした場所だった。

 アッと驚かせることが大事なので、こうした内容に“2度目”はないのだが、何度も何度も利用され続けているのが「レ ミルフォイユ」の花。なかでも千駄ケ谷店が圧倒的に多い。

 もともと、パリのマレ地区に本店を構えていた生花店で現在は雑貨店だという。

 本店ではナチュラルさと色彩にこだわり、キャンドルのような生活雑貨と花を組み合わせたり、花器にもこだわったフランスの生活芸術を提案してきたという。

 日本では、1979年に「ワールドフローリスト」を設立して以来、各地で花店やスクールを広げている中嶋敏光氏によって、99年、千駄ケ谷にオープン。

 氏のキャリアとパリのエスプリが合体して、イマドキの言葉で表すなら“インスタ映えする”こと間違いナシな可憐なアレンジメントやセンス溢れるブーケが作り出されている。

 件の美意識が高く、何事にも厳しい業界のキャリアウーマンである顧客たちに20年近くも指名され続けているのが何よりの証拠。

 一般の方はスタンド花を贈る機会はそうはないだろうが、アレンジメントやブーケで「この店」という一軒をもっていたら何かと便利だと思う。「レ ミルフォイユ」、かなりオススメだ。

週刊朝日 2017年9月22日号

著者プロフィールを見る
山田美保子

山田美保子

山田美保子(やまだ・みほこ)/1957年生まれ。放送作家。コラムニスト。「踊る!さんま御殿!!」などテレビ番組の構成や雑誌の連載多数。TBS系「サンデー・ジャポン」などのコメンテーターやマーケティングアドバイザーも務める

山田美保子の記事一覧はこちら