ウェブを使った新しいジャーナリズムの実践者として知られるジャーナリストでメディア・アクティビストの津田大介氏。アップルやグーグルなど米国のIT業界が、トランプ大統領の進める移民政策に反対する理由を解説する。
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米バージニア州シャーロッツビルで起きた白人至上主義者と反対派の衝突事件の衝撃も覚めやらぬなか、トランプ米大統領が追い打ちをかけるような行動に出て、IT業界からひんしゅくを買っている。
問題となったのは、トランプ大統領が9月5日に発表した、不法移民の強制送還猶予措置「DACA」(ダカ)の撤廃だ。
これは元々オバマ前大統領が2012年に大統領令で立ち上げた移民の救済制度。子どものころ親に連れられて米国に不法入国した15~36歳の若者が、一定の条件を満たすことで、2年間は米国で働き続けられるようにした。条件を満たす限り、2年ごとの更新も可能だという。この措置を受けている若者は全米で約80万人いて、「ドリーマー」と呼ばれる。
ダカ撤廃は元々トランプ大統領の選挙公約だった。移民に職を奪われていると不満を持つ層からの突き上げもあり、9月5日までに何らかの判断を下すことが求められていたが、これに反発したのが多くのドリーマーを従業員として抱えるIT業界。
フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)が立ち上げた非営利の人権団体「FWD.us」は、IT企業の経営トップらを中心に500人以上の署名を集めた。8月31日にトランプ大統領に宛てた公開書簡で制度の存続を求めていたが、訴えは一顧だにされず、撤廃が発表されてしまったという構図だ。
発表を受け、IT企業の経営者たちは一様にツイッターやフェイスブックなどで非難の声を上げている。アップルのティム・クックCEOは従業員たちに宛てたメールで、アップルの従業員中に250人以上のドリーマーが含まれることを明かした。