林:すごい……。

新妻:ただ、「ブランチリポーター」が最終目標の歌手にベクトルとしてつながらなければ、それは私が夢見ている方角と違う。すがっても振り向いてくれないものにすがり続けても仕方ない。だから期限を定めて、大学卒業までの1年半のあいだに歌手につながらないなら、すっぱりやめて次の生きるべき場所を探そうと思っていたんです。そしたら「レ・ミゼラブル」の話が来たんですよ。

林:神様がいたんだ。

新妻:あのときいちばん好きな歌に無理やりフタをして、少しでも見栄えのいいほうに舵を切っていたら、どこかで心が折れていたと思います。

林:テレ朝のアナウンサー試験にも受かってたんでしょう?

新妻:いや、最終のカメラテストで落ちました。ただ夢はアナウンサーではなかったので、マスコミがダメだったら国連などの社会活動とか、興味がある仕事はあったんです。でも、21歳の私を一つほめてあげるとしたら、「よくあのときに自分が生涯をかけていちばん好きと言えるものを見抜けたね」と言ってあげたい。

林:今の話は本にして若い人に読ませたいですよ。就職浪人したぐらいでいじけちゃってる子に。それはインターナショナルスクールの教育のおかげかもしれないですね。

新妻:小6から自分で選ぶ訓練をさせられたから決断できたと思います。それも含めて両親に感謝ですね。

林:お父さま、お母さまが素晴らしかったんですね。

新妻:放任です。好き勝手やらせてもらいました。

林:発声といった歌の基礎的なことはどこで習ったんですか。

新妻:私、感覚なんです。カラオケで歌っていたときはのどを締めつけるような歌い方でしたが、ミュージカルと出会って、ハンドマイクから解放されたことは大きい気がします。

林:ミュージカルではピンマイクを使ってるんですか。

新妻:ピンマイクを頭に仕込んでいます。口の前にマイクがないから、放つ空間が無限大なんですよね。それが合ってたんだと思うんです。私にとって、どのジャンルでもいちばん結果につながるのはのびのびできてるとき。何かがパーンと舞台上で解き放たれた瞬間、のどにつっかえていたものとか、いろんな不具合がスコーンと取れちゃったんです。

次のページ