
「レ・ミゼラブル」「ミス・サイゴン」などミュージカルで活躍してきた新妻聖子さん。昨今はテレビ番組のカラオケバトルで、圧倒的な歌唱力を見せつけたことでも有名です。上智大卒、TOEIC945点の才媛ですが、澄ましたところがないのも魅力。作家・林真理子さんとの対談で夢だった歌手までの道のりを語りました。
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林:「王様のブランチ」でリポーターをしていらしたんですね。
新妻:そうなんです。大学を卒業するとき、就職するのか、タレント活動して歌手をもう少し目指すのかの選択になって。「ブランチリポーターをやったって、歌手にはなれないよ」って全員に反対されたんですよ。
林:そうだったんですか。
新妻:そんなことはわかってる、と思いました。でも、就職したらもっと歌手にはなれないですよね。それは夢の放棄だし、タレントなら可能性はゼロではないと思ったんです。歌手になることを運命が許してくれるなら、何か足掛かりがあるはずだと思って、自分の運命を試すつもりもあって芸能界に飛び込んだんです。
林:でも、リポーターの若い女性って、芸能界のヒエラルキーの中ではコキ使われて……。
新妻:最下層ですかね……。ADさん並みの扱いでした(笑)。でも、私のベースは、インターナショナルスクール時代に培われた「自分は自分以外の何者でもない」という思いなんですよ。
林:おー。
新妻:あれだけいろんな人種の子がいると、教師も足並みをそろえさせようとすらしないんです。「あなたは一人のインディペンデントな人間なんだから、責任持って生きてね」って。「何が好きですか?」「やりたいことは?」と常に選択を迫られて、選んだからには責任が伴う。自分が自分である以上、そのジャンルでは私が学校の中で1番なんです。
林:なるほど。
新妻:だからオーディションに落ちればもちろん悲しいけれど、根本は傷つかないんです。私自身が否定されたわけじゃなくて、その枠に私がはまらなかっただけで、違う枠で私をものすごく求めている人が絶対にいると思っていました。リポーターのときも、チヤホヤしてもらえないけれど、それで自分の価値が下がったとは一度も思いませんでした。