ウェブを使った新しいジャーナリズムの実践者として知られるジャーナリストでメディア・アクティビストの津田大介氏。DeNAと小学館による新会社「株式会社MERY」について語る。
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記事の盗用や不確かな医療情報を発信していたことで、昨年末に“大炎上”したIT企業大手・DeNAのキュレーションメディアが、新たな段階に進んだ。
8月3日、DeNAは出版大手の小学館とデジタルメディア事業を行う共同出資会社「株式会社MERY」を設立することを発表した。代表取締役社長には小学館の山岸博取締役副社長が就任する。小学館は66.66%を出資し、DeNAは33.34%という資本構成で、DeNAから約50名が新会社に移籍するとのことだ。
9日、DeNAが開いた2017年4~6月期の決算説明会で、昨年末に運営が停止された10メディアのうち特に人気の高かったファッション情報メディアの「MERY」について、新会社の体制で年内にも復活させる方針を明らかにした。
一方で、批判の多かった医療情報メディアの「WELQ」については、再開の断念を発表。当面は若い女性から絶大な支持を集めていたMERYに注力して、キュレーションメディア事業を続ける方針のようだ。
一連の騒動では、DeNAがメディア事業を行っているにもかかわらず、社内に記事の内容について管理する編集スタッフが事実上いない状態が発覚した。ネットを通じて格安で執筆を依頼できるクラウドソーシングサービスを利用して、外部のライターに記事制作を外注していたことで、記事や画像の盗用が常態化し、質の低い情報が量産された。
こうした経緯を踏まえ、復活させるMERYでは自社単独でのメディア運営は行わず、「紙」の雑誌制作で豊富なノウハウを持つ小学館に記事掲載に至るまでの作成、編集、校閲などを任せる。DeNAはシステム構築やネット上のマーケティングといったサポートを行う方針だ。