「教えるのは難しいが、それもまたこの仕事の魅力」

 兵庫県の西村幹生さん(68)は、小・中学生向けの学習塾の講師だ。週に1、2日、英語や数学を教える。

 60歳で会社を定年退職した。「元気なうちは働きたい」とハローワーク(公共職業安定所)へ足を運んだ。趣味として数学の問題を解くのが好きだったことや、英語が得意だった経歴を生かし、塾講師の求人情報に絞った。

 勤務条件などをチェックし、履歴書を作成して何件か応募した。ハローワークでの職探しは恥ずかしいという人がいるかもしれないが、西村さんは大丈夫だと呼びかける。

「クーラーは利いてるし、行けばパソコンに触れられる。定期的に行って、関心のある情報をチェックすればいい」

 数年前には大学受験を控えた高校3年生を1年間担当。予習が大変だったが、やりがいを感じたという。70歳くらいまでは働くつもりだ。

 やる気があれば何歳でも仕事はある。東京都の女性(78)は、2年前からシルバー人材センターを通じて家事の補助をしている。75歳を超えて働く理由は金銭的に厳しいから。夫が経営していた会社が5年前に倒産。夫とは離婚したが、マンションのローンが10年以上残っており、生活のために働いている。

 自分の得意分野だった家事を仕事に選んだ。依頼者の自宅の掃除をしたり、共働き家庭の子供を保育園に迎えに行ったりする。

「お客さんは忙しい人なので、時間を厳守する。10分前には依頼先に着くようにしている。お子さんの送迎は安全面にいちばん神経を使う」

 シルバー人材センターに登録した当初は月2万円ほどだったが、現在は5万~6万円の収入になっている。この女性は、

「こうしてお仕事ができるのですから、幸せですよ。80歳を過ぎても体が動くうちは働きますよ」

 と前向きだ。

 業界関係者によると、核家族の共働きが増えたことで、家事手伝いの依頼は増加傾向だという。家事に時間を割けないキャリアウーマンからの要望もあって、活躍の場は広がっている。

週刊朝日  2017年8月18-25号

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