親が親しい人とは、なるべく自分も関わりを持つようにするのが理想。何かあったときに頼れるばかりでなく、普段の親の様子を知る手段にもなる。親がよく接する人には、「おかしいと感じたら、いつでも連絡をください」と伝えておくと良い。これまで16年間、要介護者を担当してきた、ケアマネジャーの牧野雅美さん(アースサポート居宅介護支援事業所所属)は言う。
「親と離れて暮らしている人なら、自分の連絡先は親の周囲にいる人に積極的に伝えておいて。帰省のときには、あいさつを兼ねて、名刺を置いてくると良いでしょう」
目の前の親の姿を信じ込みすぎることも危険だ。田中さんは言う。
「久しぶりに会った親の姿をうのみにして、『元気じゃん』で帰るのはダメ。離れて暮らしていれば余計に、親は子どもに対して気を張って接しがちです。普段はなかなか動けないのに、『歩かなきゃ、元気に見せなきゃ』と頑張ってしまう。だからこそ、普段の親を知る人の話も聞けるようにしておくと安心です」
『老いた親のきもちがわかる本』(朝日新聞出版)の監修者で、高齢者の心理に詳しい佐藤眞一さん(大阪大学大学院教授)は、「子どもからのこまめなコミュニケーションが、親に安心感を与える」と指摘する。
「体が弱ってくると、自分は子どもに迷惑をかけているのではという大きな不安に支配されてしまうものです。それを防ぐためにも、頻繁に会話するよう心掛けましょう。会話で認知症をチェックできる指標も参考にすると、異変を察知しやすいですよ」
早めに異変に気付くことは、ひいては親や自分を救うことになる。お盆の帰省でさっそくチェックしてみてはどうだろう。
■会話の異変チェックリスト
1.会話中に同じことを繰り返し質問してくる
2.話している相手に対する理解があいまい
3.どのような話をしても興味を示さない
4.会話の内容に広がりがない
5.質問しても答えられず、ごまかしたり、はぐらかしたりする
6.話が続かない
7.話を早く終わらせたいような印象を受ける
8.会話の内容が漠然としていて具体性がない
9.平易な言葉に言い換えて話さないと伝わらないことがある
10.話がまわりくどい
11.最近の時事ニュースの話題を理解していない
12.今の時間(時刻)や日付、季節などがわかっていない
13.先の予定がわからない
14.会話量に比べて情報量が少ない
15.話がどんどんそれて、違う話になってしまう
※「日常会話式認知機能評価」大阪大学大学院提供
※週刊朝日 2017年8月18-25日号