60歳まで生きた男性が平均あと何年生きられるかを示す「平均余命」は23.67歳。70歳まで繰り下げるほうが、平均で考えると“お得”なのだ。
社会保険労務士でブレインコンサルティングオフィス代表の北村庄吾さんは、資産状況や健康状態などを考えて決めるべきだとアドバイスする。
「自分が長生きの家系だと思えば、繰り下げを検討してみるのもいい。1年繰り下げるだけで、年8.4%の利息がつくようなものだ。こんなお得な金融商品はない。年金額は死ぬまで変わらないので、長生きすればするだけ得をする。これから医療技術が発達して、健康でもっと長生きできる時代が来るかもしれない。繰り下げできるように、65歳以降も働き続ける準備が必要になってくる」
年金はそもそも、長生きして働けなくなったときに備えるものだった。今は元気なら65歳まで働くのが一般的になっている。将来は繰り下げできる年齢が、70歳から延びる可能性が高い。7月18日にあった内閣府の高齢社会対策の検討会では、「75歳とか、もっと延ばしてもいい」との意見も出たという。
現状ではメリットがあまり知られておらず、繰り下げている人は対象者の数%しかいない。これから年金を受け取る50代の人たちは、前向きに検討してみるといいだろう。
老齢基礎年金を満額受け取るには40年間保険料を納める必要があるが、60歳になっても達しない人もいる。
例えば、22歳で大学を卒業して就職するまでの2年間払っていなかったBさんのようなケースだ。満額を年約80万円と想定すると、38年間の加入では約4万円少ない約76万円しかもらえない。こうした場合は、60歳から2年間任意で加入すればいい。