ジャーナリストの田原総一朗氏は、安倍晋三首相に厳しい言葉を贈る。
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安倍晋三首相はどんな意向があって7月24、25日に衆参の予算委員会の閉会中審査を開いたのか。国民にいったい、何を訴えたかったのか。それが、さっぱりわからない。それが両日の国会でのやりとりを聞いて、新たに生じた疑問であった。
たしかにこれまでの答弁より安倍首相の口調は丁寧で、説明には長い時間をかけた。だが、国民のほとんどが求めたのは丁寧な口調や説明の長さではなく、加計学園の獣医学部を今治市に新設すると決めた理由が納得できるかどうか、だった。その疑問は今回の予算委で、はっきりと安倍首相に対する不信となった。
いくつかの新聞が「水掛け論」に終わったと書いたが、「水掛け論」などではない。おそらく安倍内閣の支持率はさらに下落するはずである。
安倍首相は、加計学園の獣医学部新設の計画を初めて知ったのは、政府が獣医学部の新設を認める決定をした今年の1月20日だと述べた。
しかし、民進党の調査では安倍首相は昨年だけで、加計孝太郎理事長と7回も食事やゴルフをしている。親友と7回も食事やゴルフをしながら、加計氏にとって重要な獣医学部新設の話をまったくしなかった、という話を信じられる国民は、まずいないであろう。こんな不自然なことを信じよ、というほうが無理である。
しかも、安倍首相は6月5日の参院決算委員会で、「安倍政権になってから、国家戦略特区に申請を今治市とともに出した段階で承知した」と答弁しているのである。6月16日の参院予算委員会でも「構造改革特区で申請されたことについて、私は承知している」と答弁している。
民進党の蓮舫氏にそのことを追及されると、「混同していた」「厳密さを欠いていた」と、まごつきながら、6月の答弁との矛盾について「急な質問だったので」「整理が不十分なまま答弁した」と釈明した。だが蓮舫氏は、質問は事前に文書で示したものだったと言っている。
森友学園問題でも同様だが、追及する側には少なからぬ文書があるのに、追及される側には文書がまったくない、というのはどういうことか。
たとえば、森友学園に国有地を売却する価格が8億円以上も引き下げられた理由などを記した文書をすべて破棄した、とはどういうことなのか。加計学園問題でも、文部科学省側には数多くの文書があるのに対し、内閣府側には文書がない、と山本幸三地方創生相が答えている。どの省庁にしても、省庁間のやりとりを文書化しない、などということはあり得ないはずである。しかも、文書を破棄した責任者が、国会でウソとわかる無神経な答え方をして、国税庁長官に栄転している。これでは政府が、官僚たちにウソをつくことを奨励しているようなものだ。
7月24日付の毎日新聞の世論調査では、安倍内閣の支持率が26%となった。7月14日配信の時事通信の世論調査でも29.9%である。支持率はさらに下落するだろう。30%を切るということは、少なからぬ自民党支持者が安倍内閣を見限っているのだ。となると、少なからぬ自民党議員の選挙での当選が危なくなる。だから、これ以上支持率が下落すると、自民党内から「安倍おろし」の声が噴出するであろう。
※週刊朝日 2017年8月11日号