東村:最初は、こんなこと描いたら怒られちゃうかなと思ってたんですけど、怒ってくる人もあんまりいなかったんです。漫画だとイヤミにならない感じがあったのかな。

林:へえ、そうだったんですか。

東村:私、松苗あけみ先生の「純情クレイジーフルーツ」が大好きで、80年代、90年代あたりってそこそこイケイケのきれいな女の人たちが、トレンディードラマみたいな感じで男の文句をワイワイ言いながら飲んだり食べたりする華やかな漫画がいっぱいあったんです。そういうのをもう一回やりたいなと思ったのと、「セックス・アンド・ザ・シティ」の東京版をやりたいというのが、私の2大テーマだったんです。

林:なるほど。酒井順子さんが書いていて、私もなるほどなと思ったんだけど、80年代は小洒落たイタリアンでワイン飲みながらああいう話をしてたのに、今はそれが居酒屋になってるって。

東村:そうなんですよ。大衆酒場ブームで、私もここ5年ぐらいアシスタントと一緒に「せんべろ」(千円でベロベロに酔える居酒屋)の店に行くようになったんです。そうしたら、OLのきれいなおねえさんが新橋のガード下なんかで飲んでいて、なんだかカッコいいなと思ったんですよ。これって地球上で東京だけなんじゃないかと思って、「東京のOL賛歌」という意味も込めていて。

林:私、切なくなりましたよ。女の子の気持ちって、時代が変わっても変わらないんだなとあらためて思った。私も昔を思い出して、「わかる、わかる」って。

東村:どんなに「私は顔とか見た目とかはカンケイない。ぜんぜんいい男じゃなくていいから」って言ってる人でも、結局「いい男」の要素がある男にみんな引っかかりますもんね。それがつまんない男でも。

林:やっぱり男の人は外見ですよね(笑)。あと、皆さんが必ず言うのは、「どこに行けばいい人がいるのかわからない」。

東村:ああ、言いますね。「出会いがないんですよ」って女性の編集者さんとかに言われると、「じゃ、地球上どこに行ってもねえな!!」って答えます(笑)。「地球上でいちばん人口過密の東京で、毎日何千人もの人とすれ違っていて出会いがないんだったら、もうどこに行ってもないわ!! アハハ」って。

週刊朝日 2017年7月21日号より抜粋

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