福島第一原発の事故後、ドイツ、スイス、イタリア、台湾が脱原発に踏み切る中、韓国も足並みをそろえるように原子力エネルギーとの決別を決めた。一方、対照的なのが安倍政権。福島の事故でまだ10万人近くが家に戻れない中、原発再稼働が進み、新増設に向けた動きも出始めた。
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韓国の文在寅大統領は6月19日、発電開始から40年を迎えて運転を終了する国内で最も古い古里原発1号機の廃炉を宣言する式典でこう宣言した。
「準備中の新規原発の建設計画を全面的に白紙に戻し、寿命を迎えた原子炉は運転しない。さらに、今まで原発に依存していた発電政策もやめる。原発は安全でも、安くも、環境に優しくもない」
日本と同様、化石燃料に乏しい韓国では、1950年代後半から原子力エネルギーの開発に取り組んできた。現在までに試験運転中を含めると25基の原子炉が稼働し、建設中や計画中のものは約10基に上る。国際原子力機関によると韓国の原発依存度は28.7%で、フランス、ウクライナ、スウェーデンに次ぐ高さだ。
だが、6年前の福島第一原発の事故以降、国民の間に反原発の機運が高まっていた。地元紙記者が言う。
「福島原発事故の2年後、国内の6基の原発に使われていた安全装置部品で性能試験の結果が偽造されていたことがわかり、国民に不信が高まりました。昨年9月には、慶州で韓国気象庁が観測を始めて以来最大となるマグニチュード5.8の地震があり、福島の悲劇はよそ事ではないと思い始めているところです」
今年、朴槿恵大統領が罷免された後に行われた大統領選で当選した文氏だが、そのときの選挙公約に脱原発を掲げるなど、もともと原発政策に懐疑的。
そのため、冒頭の19日の演説でも、「韓国は地震の安全地帯ではない」「福島原発事故では被害の復旧に約22兆円がかかる」など、盛んに原発リスクを訴えた。原発依存をやめた後は、自然エネルギーの開発に力を入れるという。