「私が治療したうち約60人のデータで効果の有無の予測因子を検討したところ、年齢を65歳未満とそれ以上に分けると、明らかに若いほうが効きました。もう一つは合併症の数。高血圧、脳梗塞、心筋梗塞、糖尿病、高脂血症のうち三つ以上重なると効き目が悪いです」(同)

 ED1000は保険適用外で、自費で40万円ほどかかる高額な治療。そのため、患者に予測因子を説明し、治療を受けるか決めてもらうという。現在、広島大学が唯一、臨床研究として実施しているが、そのほかでこの治療を実施するのは、泌尿器系、美容系などのクリニックのみだ。久末医師自身も千葉西総合病院ではおこなわず、OASISメディカルクリニック原宿(東京都渋谷区)で2週間に1度実施している。

ED治療の歴史を振り返ると、1999年、バイアグラの登場で治療が画期的に変化し、その後、レビトラ(2004年)、シアリス(07年)も発売され、これらの3種類の薬による治療が第一選択だ。それぞれ効果が出るまでの時間や持続時間が異なるが、いずれもセックスのために勃起が必要なとき、事前に服用する。

 効き目が悪い場合には、ICIという自己注射で治療をすることもある。最終的には、プロステーシスというシリコーン製の支えを埋め込む手術という方法もあるが、現時点では手術まで受ける人は少ない。そこに新しい選択肢として登場したのがED1000だ。

 この治療の評価はいかがなものなのだろうか。日本性機能学会名誉理事長で、ED研究の草分け的存在である博慈会記念総合病院泌尿器科顧問の白井將文医師はこう話す。

「ED1000は、薬物療法が効かない場合のオプション治療の一つとしては検討できるでしょう。根治が望める可能性があるのは事実ですが、治療費が高額ですし、あくまでも研究的治療であることを患者さんは十分認識してください。泌尿器科の専門医のもとできちんと説明を受け、慎重に検討したうえで治療を受けるべきです」

 白井医師は、EDは勃起機能の回復と性生活の改善のみにフォーカスされがちだが、実は、重篤な病気のシグナルであることも知っておくべきだと話す。

「EDの多くは、血流が滞って起きます。陰茎の血管は約2ミリで、心臓など他の重要臓器の血管より細い。ですから、EDは心筋梗塞や脳卒中の前触れや、すでにそういう病気が起きている目印になりうるのです」

 同院では、FMD(血流依存性血管拡張能)という血管の内皮機能を腕で測る検査を実施し、陰茎をはじめ全身の動脈硬化を評価している。白井医師は言う。

「EDは恥ずかしい病気ではありません。克服すればQOLが高まりますし、怖い病気が隠れているのを発見して治療につなげられます。兆候のある人は泌尿器科を受診してください」

「性生活はもういい」と、EDを放置している人も、健康寿命を延ばすために検査をしてみては。

週刊朝日 2017年6月30日号より抜粋

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