ドラァグクイーンとしてデビューし、テレビなどで活躍中のミッツ・マングローブさんの本誌連載「アイドルを性(さが)せ」。今回は若手俳優界の“問題”を指摘する。
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「日本はいつからこんなにもオカマだらけになったのだ?」。そんな声を聞くようになって久しいわけですが、だったら言わせて頂きたい。「日本はいつからこんなにも『若手俳優』だらけになったのだ?」と。
私が10代・20代の頃は、織田裕二・吉田栄作・江口洋介・加勢大周の4強に加え、的場浩司・萩原聖人・東幹久といったラインが若手の主流。さらには緒形直人・高嶋兄弟・真木蔵人など2世系も充実していました。やがてそこに『木村拓哉』なる完全無欠なモンスターが登場したことで『ジャニーズ=俳優』という磐石な図式が構築され始めます。同じ頃、少し毛色の変わった個性派として武田真治・いしだ壱成も人気を博し、さらには反町隆史&竹野内豊のモデル出身派も一世を風靡した90年代。当時は若手俳優の多くが歌手活動も並行して行うのが通例で、織田裕二、吉田栄作、江口洋介、いしだ壱成、武田真治、反町隆史はそれぞれトップ10ヒットを飛ばしています。『アイドルは唄う!』という芸能の鉄則が成立していた最後の時代だったと言えるでしょう。そして、その最後にして最大のビッグサクセスが福山雅治です。福山さんの場合は、元々がシンガーなので『役者が歌を出す』のとは少し違いますが、やはり『売れっ子→歌手デビュー』の概念が染み付いている世代としては、今の若手アイドル系俳優が歌わないのは少し寂しくもあります。たとえ下手な若気の至りだとしても、そこを通って初めて『役者』として認められる。しかし、若手俳優が勢いだけでCDを出すなんて無駄な時代になってしまいました。なので、菅田将暉の歌手デビューには殊(こと)さら懐かしさが込み上げてきます。是非とも20年後に赤面するぐらいのやつを!
そんな『アイドル俳優』たちの役者化に市民権を与えたのは、紛れもなく岡田准一ではないでしょうか。だとすれば皮肉なものです。今なおバリバリのアイドルとして歌い踊っている岡田くんに敵う人なんて、そう簡単に出てくるはずがありません。ならば早いところ所帯を持って『イイ役者』に転じ、『A−Studio』で鶴瓶師匠に煽ってもらう方が得策。結果、小栗旬も松山ケンイチも、そして唄わない(唄わなくてもいい)ジャニーズ・生田斗真まで、やたら居心地良さそうにバラエティに出てはニコニコしています。今からでも遅くない。歌えなかったラヴ・ソングを歌おう♪(by 織田裕二)
※週刊朝日 2017年5月19日号