2017年は「欅」──最近そんな声があちこちで聞かれる。乃木坂46に続くアイドルグループとして2016年4月にCDデビューし、その年のうちに紅白出場を決めた欅坂46。新曲「不協和音」の歌詞どおり、アイドルの「既成概念を壊」した、史上最強と言われるその秘密に迫る!
欅坂46のセンター・平手友梨奈が、デビュー曲「サイレントマジョリティー」で右手を高くかかげ、両サイドにわかれたメンバーの間を歩く、「モーセの十戒」と呼ばれるパフォーマンス。それは、グループアイドル界に新たな道が切り開かれた瞬間だった。
2016年4月に発売されたこの曲の初週売り上げは、女性アーティストデビュー曲として歴代最多枚数の26万2千枚を記録。その後もCDは売れ続け、1年たった現在もチャート100位以内にランクイン、YouTubeの再生回数は5400万回を超えている。曲をリリースするごとに売り上げは伸び、昨年末には紅白歌合戦にも出場。紅白効果で、1月にはそれまでのシングル3枚すべてがチャートの上位にランクインした。
「駆け上がり方の速さも、同じ秋元康さんプロデュースのAKB48や乃木坂46よりも圧倒的に速い。もちろんそのAKB、乃木坂あってこそのものではありますが、彼女たちに何もなかったら、ここまで絶対たどりつけていません」
アイドル事情に詳しい音楽評論家、宗像明将さんが言う。
欅坂46は、乃木坂46に続く“坂道シリーズ”第2弾という位置づけの21人グループだが、フランスの清楚なリセエンヌというイメージの乃木坂に対して、欅坂のコンセプトには、イギリスのロックカルチャー的な、スタイリッシュなイメージが投影されている。
「曲、ダンス、衣装、CDジャケットなど、統一美を徹底的に追求した視覚的な快楽がとても強く、見るだけでカタルシスを感じる。これまでのアイドルが歌って踊る、いわゆる“振り付け”とは全く違うものだという感覚です。もはや歌うことを想定していないとすら思うような振り切れ方をしている。ある種の美意識の最終形ではないでしょうか」(宗像さん)
ちなみに、「週刊朝日」2017年1月20日号の特集「期待のひと2017」にも登場し、欅坂のアンダーグループとして結成された「けやき坂46」、通称“ひらがなけやき”というグループも存在する。こちらは現在12人。メンバーの長濱ねるは、二つのグループを兼任している。
発売されたばかりの最新シングル「不協和音」のミュージックビデオについても、宗像さんはこう語る。
「冒頭、横たわっていた平手さんがユラリと立ち上がり、そこに他のメンバーが走りこんできて、全員が同時にポーズをキメる。その瞬間の圧勝感。欅坂の持つ緊張感は、さらに増したと感じました」
シングル曲のパフォーマンスではほとんど笑わずクールな印象が強いが、アイドルグループらしいポップな曲や、昭和の歌謡曲やフォークを思い起こすような、ちょっと懐かしい雰囲気の楽曲も持ち歌にしている。彼女たちの冠バラエティー番組でも、等身大の姿が見られる。
「バラエティーやカップリング曲などで、それぞれの個性を見せながら、表題曲ではあえて個性を消して統一美を見せる。そういう構造も面白い」(宗像さん)
4枚のシングルすべてのセンターをつとめてきたのが、2017年4月21日号の「週刊朝日」表紙を飾っている平手友梨奈。その圧倒的な存在感から、所属するレコード会社の大先輩・山口百恵さんの再来と形容されることもある。
「彼女のことを何も知らなくても、何か違う、ただ者ではないと思わせる強烈なスター性、そこは似ているかもしれません。最新曲の『不協和音』でも、平手さんの形相は、すごいものになっている。そんな彼女がこのあいだまで中学生だったという事実。百恵さんと違うのは、独特の憂いがないところでしょうか」(同)
「不協和音」の売り上げは、発売初日で45万枚を突破、自己最高記録を更新している。宗像さんは言う。
「この先5年ぐらいは、このインパクトを超えるアイドルグループは現れないんじゃないか、そのぐらいの突き抜け方をしている存在です」
欅坂46が2017年を引っ張ることは、間違いなさそうだ。「サイレントマジョリティー」の歌詞通り、「つまらない大人は置いて行け」と言われてしまわないよう、彼女たちから目を離してはならない。
※週刊朝日 2017年4月21日号