
健康診断、人間ドックに必ずと言っていいほど含まれている「特定健康診査(以下、特定健診)」。その基準範囲を超え、将来的に脳卒中や心臓病などが発症するリスクが高い受診者には、特定保健指導が行われる。
特定健診の基準範囲から漏れる人、つまりリスクがあると判定されてしまう人はどれくらいいるのか。
健康保険組合連合会(健保連)が、14年度に特定健診を受診した健保組合の被保険者約270万人(40~74歳)を対象に行った調査を見ると、肥満で基準値を上回った人の割合は40.8%、血圧は35.1%、脂質は24.8%、血糖は33.5%。複数のリスクに該当し、メタボリック症候群の該当者、および予備群とされる人の割合は、3割にも上っていた。
こうした結果をみると、患者を増やすだけじゃないかと懸念する人もいるだろう。しかし、「特定健診の基準値は薬を飲むか飲まないかの基準ではなく、生活習慣を見直して値を改善させるためのもの」(健康診断で行う保健指導の第一人者、津下一代あいち健康の森健康科学総合センター長)だ。
「特定健診でひっかかり、保健指導を受けたことで服薬率が減ったというデータもあります。また、将来、薬が必要な状態になっても特定健診や保健指導で得られた知識があると、全身管理がうまくいくことが多い。薬は体重管理や運動などとの合わせ技で効く。自己管理能力をつけた患者さんでは、薬の効き方が全然違います」(同)
では、どうすれば健康寿命を延ばすことに健診を役立てることができるか。活用術のポイントを専門家に聞いた。
■生かし方(1)腹囲だけでなく肥満度もチェック!
メタボリック症候群の診断基準の一つ、腹囲。男性85センチ未満、女性90センチ未満という基準範囲については、特定健診の開始時から議論されている。最近も見直すという話があったが、結局、従来のまま据え置くことになった。
「確かに、やせているがほかの数値が高い、“隠れメタボ”の人がいるのも事実です。ただ、特定健診は“内臓脂肪に起因する病気の予防”が目的。よって、皮下脂肪の多い女性は男性よりも基準範囲が大きくなります。また、循環器の病気の発症年齢をみても、男性のほうが女性よりも10年早い。そうしたリスクを考慮しても、この数値でいいということになりました」(同)