昨年、自身も手術を受けた杉田眼科院長の杉田達医師もこう話す。
「“手術しますか?”と聞いて、“ハイ、お願いします”と即答する人はあまりいません。8割ぐらいが様子を見ることになります。いくら安全に手術できる、見え方が改善すると言われても、やっぱり手術はコワイ……というのが、人間の心理。私も繊細な手術を日常的に手がける眼科医でなかったら、もう少し手術を先延ばしにしていたと思います」
一方で、佐々木医師は、患者の自覚症状よりも、視機能の低下を優先して手術の時期を判断している。患者自身が視力低下に気づいていないことがあるからだ。
「視力を測定して実際は0.4しかないのに、“テレビも見えるし、遠くの山だって見えますから、まだ大丈夫”という患者さんが結構いるんです。しかし、手術をすると、ほとんどの人がもっと早く手術をすればよかったと話します」
また、白内障になると視力だけでなく、コントラスト視力(対象物と背景の明るさの対比を少なくして測定する視力。対比が弱いほど見えにくい)も下がるため、ちょっとした段差がわかりにくくなって転倒しやすくなる。
「転倒して骨折したことをきっかけに寝たきりになることもあるし、転倒が死因になることも珍しくありません。ですから高齢者の場合、多少視力がよくても健康寿命を延ばすためにも早めに手術を検討したほうがよいでしょう」(佐々木医師)
眼の手術はこわい。しかし白内障なら、視力を取り戻すチャンスでもある。“見える眼”になって健康寿命を延ばしたい。(現在、絶賛発売中の週刊朝日MOOK『老眼&白内障 完全ガイド』より)
※週刊朝日 2017年4月14日号

