ただ、膨大な額になるであろう損害賠償金を、個人が支払える可能性は極めて低い。時間と労力をかけて訴訟に勝ったとしても、現金回収という目的は空振りに終わってしまうというわけだ。

 なお、偽装された決算書に基づき取引していた金融機関から刑事責任を問われる可能性はある。

 聞けば聞くほど、旅行代金は諦めるしかないという悲しい現実が浮き彫りになってきた。今思えば、あり得ないほどの低価格を疑わなかったのがバカだった。

 とはいえ、てるみくらぶは社員約80人、全国に4支店を持つ中堅旅行会社だ。

 記者に限らず、一定の信頼を寄せていた人は多かっただろう。ここが倒産するなら、今後どうやって旅行会社を選べばよいのか? 元H.I.S.社員で旅行ジャーナリストの大川原明氏に聞いた。

「てるみくらぶは、以前は分割カード払いができたのに、ここ1年ほど一括払いしか受け付けなくなったと聞いています。カードの一括払いや現金払いしか認めないのは、運転資金が不足していて、自転車操業をしている証しである可能性が高いといえます」

 大川原氏によると、現在の旅行業界は薄利多売の格安ツアーを販売しなければ収益を伸ばせない苦しい状況にあるという。

 その理由は、ネットの普及により旅行者が自分で航空券の手配や宿泊予約ができるようになったから。自社を利用してもらうために、各社ともギリギリの価格設定にしているから、数を売らなければ利益が出ない。そんな苦しい状況の中、広告宣伝に経費をかけすぎたのが、てるみくらぶ破綻の一因だという。

「ここ2年くらい、てるみくらぶの大きな新聞広告をよく目にするようになり、中堅クラスなのに、よくこんなに広告費を出せるな、と驚いていました。赤字になってでも認知度を上げたかったのでしょうが、結局補填(ほてん)できずに倒産してしまった。このように、規模に合わず派手な広告を出している会社も怪しいと言えます」(大川原氏)

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