作家・北原みのり氏の週刊朝日連載「ニッポンスッポンポンNEO」。北原氏は、愛国にはまる女性たちの声は少数派ではなくなったという印象を受ける。
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3月18日、山城博治さんが保釈された。沖縄の平和活動家の山城さんが高江のヘリパッド建設抗議で、道にブロックを積んだ、沖縄防衛局の職員の肩を揺さぶった……などの「罪」で逮捕されたのは、去年の10月。それから5カ月間ずっと、拘束され続けた。
下着泥棒の過去があるとされる大臣に、白紙領収書受け取ったり、国会で泣いたり、嘘ついたりする防衛大臣に、お友達になるといろいろと便宜を図ってくれるらしい総理夫妻……。政権の方々がやりたい放題に振る舞う一方、生活と尊厳を守るための丸腰の市民活動が厳しく処罰の対象になる。正義の価値判断の基準が、どこにあるのかわからない不気味さが、沖縄から日本を見るときにはいつも、ねっとりとつきまとう。
先日、沖縄で、ハブ捕り名人が逮捕された。え? ニュースを二度見した。まじかジャパン? 30年間ハブを捕ってきた名人が今月、動物愛護法違反で逮捕され、東京まで連れていかれたのだ。捕ったハブを売るまで自宅で「保管」していたのを、警察は「飼育」と見なして逮捕したとか。さすがに10日で不起訴になったというけれど、いくらなんでも、どう考えても、警察官に心があり言葉の通じる人間ならば、フツーは起きない「事件」だろう。沖縄から見える権力は、はっきりと狂気の顔をしてる。
櫻井よしこさんが司会を務めるインターネット番組「言論さくら組」を見る機会があった。櫻井さんが見込んだ記者や言論人、女性ばかりを集めて中国や韓国や沖縄の市民運動を「反日」と断定して、明るくディスり続けていた。番組の収録は森友学園問題以前だったのだろう。「安倍昭恵さんが日本でも大麻を育てましょう、と仰っていますね」と櫻井さんが嬉しそうに語っていたりなど、見所も多かった。総理からしてみれば、櫻井さん今は黙っててくれ……な感じだろう。
以前『奥さまは愛国』という本を書いた時に、愛国にはまる女性たちを取材した。故中川昭一氏の写真をケータイのホーム画像に設定し、日章旗のシールをケータイにつけて、「慰安婦」は嘘つき!と笑う女性たちが口をそろえて言っていたのは、「安倍さんのおかげで、運動しやすくなった」ということと、「知らなかった真実に目覚めた」こと。番組を見ながら彼女たちの顔を思い出した。
もう、彼女たちの声は、決して少数派などではない。安倍さんやそのお友達の力で、沖縄や韓国を嘲笑するような視線は既に権力の顔をしている。日本から沖縄を見ようとしても、深い霧がかかってしまっているかのように、そこに生きている人の顔や痛みが見えなくなっているのかもしれない。
※週刊朝日 2017年4月7日号