「ある患者は飼育者に事情を話し、小屋を解体してもらうように交渉したそうです。鳥を避けるために、一戸建ての家からコンクリートに囲まれた都内のマンションに引っ越した方もいます」(東京医科歯科大学病院呼吸器内科の宮崎泰成教授)
東京23区内でも、民家のベランダなどで小型の飼育小屋を置くケースもある。外からは発見しづらく回避が難しい。
健康ブームに乗って、家庭菜園を趣味にする人もいるだろう。だが、抗原がたっぷり含まれた鶏ふん肥料にも気をつけてほしい。
公園や神社でハトにエサをあげたり、ふんを掃除する場合も注意が必要だ。
定年退職後、公園で掃除のボランティアを長年続けていたある高齢の男性。医療機関を受診したときには、すでに肺胞の壁が硬く線維化した肺線維症になっていた。本来、空気を吸うために柔らかい肺組織が硬くなるのだから、呼吸が十分にできず、ひどく苦しい。男性は、間もなく亡くなった。大谷医師がこう警鐘を鳴らす。
「私の患者も何人も命を落としています。決して甘く見ないでください」
羽毛製品の抗原量はそれほど多くなく、単独で発症する人はまれだ。羽についている「ブルーム」は、時間の経過とともに羽毛から取れていくからだ。だが、過去に飼育歴がある人やハトなど鳥の多い環境にある人は、羽毛製品をきっかけに発症する可能性もある。
「古い羽毛布団では何ともなかったのに、買い替えた途端に症状が出たという患者もいます。鈴木さんのように、長い年月、ハトの抗原にさらされることで発症するケースもあります」(大谷医師)
なかには、高級車の運転手の男性が発症した例もある。高級車では、掃除用に最高級のダチョウの羽で作られた毛ばたきを使うことがあるからだ。
春に向けて日差しも暖かになってきた。3月下旬から桜も見ごろを迎える。お花見や公園での散歩、マラソン、ウォーキングを楽しむ人も増えるだろう。だが、公園には鳥の羽やふんもある。いったん発症するとわずかな抗原でも悪化することがある。用心に越したことはない。
※週刊朝日 2017年3月17日号より抜粋