長引く腰痛は、精神的なストレスや不安が影響している可能性があるという (※写真はイメージ)
長引く腰痛は、精神的なストレスや不安が影響している可能性があるという (※写真はイメージ)
この記事の写真をすべて見る

 長引く腰痛は、精神的なストレスや不安が影響している可能性がある。昨年、新しいメカニズムで作用する薬が承認された。もともと、うつ病を対象とした薬として承認されていたが、適応追加された形だ。

 日本人の成人の4.4人に1人は腰痛があるといわれる。同じ姿勢で長時間作業をしていたら腰が固まってしまった、急に重いものを持ち上げようとして腰を痛めたなど、多くの人が経験しているだろう。それほど腰痛は一般的な病気だ。

 しかし、その痛みが3カ月以上続く場合は慢性腰痛と診断され、適切な治療を受ける必要がある。

 腰痛の治療には薬物療法、運動療法、認知行動療法、神経ブロック療法、物理療法(温熱、電気などの刺激を含む)、理学療法(リハビリテーション)などがあり、患者の状態によって適切に選択され、組み合わされる。

 東京都在住の林清香さん(仮名・30歳)は中堅のメーカーに勤務しデスクワークをしていたが、1年近く前から腰に痛みを覚えるようになった。整形外科で検査したところ腰椎椎間板ヘルニアと診断された。

 腰椎椎間板ヘルニアとは、椎間板の中のゼラチン状の成分(髄核)が飛び出して神経を圧迫することで痛みを生ずる。痛みのピークは2~3週間で、徐々に軽快する。

 林さんも整形外科で薬を処方されたが、アセトアミノフェン(商品名カロナール錠など)や消炎鎮痛薬ロキソプロフェン(商品名ロキソニン錠など)では改善がみられず、痛みが続く慢性腰痛になっていった。

 痛みが強いとき林さんは会社を休むこともあったが、上司に「腰が痛いくらいで仕事を休むな」と叱責され、休みにくい状況になっていた。また、病院でも医師に相談することなく我慢していた。しかし、ある朝、立ち上がることができなくなり、友人の紹介で高円寺整形外科院長の大村文敏医師を訪ねた。

 大村医師が問診とX線撮影などの検査をおこなったところ、林さんの腰椎椎間板ヘルニアは重症で手術も検討するレベルとわかった。が、本人の希望で手術は見送り、薬で様子を見ることになった。そこで大村医師はデュロキセチン(商品名サインバルタ)を処方した。

 デュロキセチンはもともと「うつ病・うつ状態」を対象とする薬として承認されたが、2016年3月に「慢性腰痛症に伴う疼痛」の治療薬として適応追加された。

「日本では抗うつ薬と認識されていますが、世界的には疼痛治療薬と位置づけられています」(大村医師)

次のページ