とはいえ今回は、國村さん演じる山の中の男が崖から落ちた場面と、鶴嘴(つるはし)を持って怒鳴りまくる場面とで、コントロール不能になっている自分に気づいたのだそうだ。

「でも無我の境地とかではなく、アンコントローラブルになってる自分のことはちゃんと自覚してる。その上で、“いてまえ!”みたいな感覚ですね(笑)。どんな俳優にも少なからずマゾヒスティックな部分があるものだけど、監督はサディスティックな部分がないと務まらない。本当に、人間ってつくづくえたいの知れない生き物だよね。だって、追い込まれることで、この年になっても知らなかった自分がまだ出てくるんだから」

 俳優の仕事の面白さは、「共同作業であることに尽きる」と國村さん。

「僕は、この世代には珍しく一人っ子なんです。だから、学校が終わって、みんなで近くの空き地なんかで“この指止まれ!”をして遊んでいても、家に帰ってご飯を食べたあとは、ひとりぼっちになってしまう。きょうだいがいたら、ご飯の後、この指止まれの続きができたのにと、周りの友達が羨ましかった。もちろん、のしかかってくる責任は違うし、俳優は遊びじゃできないですが、映画に関わっているときは、延々と、この指止まれの続きをしているような、そんな喜びがあります」

週刊朝日 2017年3月17日号

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