石原壮一郎(いしはら・そういちろう)/コラムニスト。1963年、三重県生まれ。著書に『大人の言葉の選び方』『大人力検定』『父親力検定』など。郷土の名物を応援する「伊勢うどん大使」「松阪市ブランド大使」「おにぎりせんべい特別大使」を務める(撮影/遠崎智宏)
石原壮一郎(いしはら・そういちろう)/コラムニスト。1963年、三重県生まれ。著書に『大人の言葉の選び方』『大人力検定』『父親力検定』など。郷土の名物を応援する「伊勢うどん大使」「松阪市ブランド大使」「おにぎりせんべい特別大使」を務める(撮影/遠崎智宏)
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五百田達成(いおた・たつなり)/作家・心理カウンセラー。1973年、東京都生まれ。『不機嫌な~』のほか、『察しない男 説明しない女』『特定の人としかうまく付き合えないのは、結局、あなたの心が冷めているからだ』などがベストセラーに(撮影/遠崎智宏)
五百田達成(いおた・たつなり)/作家・心理カウンセラー。1973年、東京都生まれ。『不機嫌な~』のほか、『察しない男 説明しない女』『特定の人としかうまく付き合えないのは、結局、あなたの心が冷めているからだ』などがベストセラーに(撮影/遠崎智宏)

 あなたは、長子(長男・長女)? それとも中間子、末子、一人っ子のどれか? 「きょうだい型」分析を使えば、自分や他人の性格を理解できる──。そんな興味深くもちょっと怪しげな本が話題だ。著者は、自称「人間関係オタク」の五百田達成氏。同種のオタクで、大人のコミュニケーションを探究する石原壮一郎氏が疑問をぶつけてみた。

*  *  *

石原:11月刊行の『不機嫌な長男・長女 無責任な末っ子たち』が人気です。サブタイトルに「『きょうだい型』性格分析&コミュニケーション」とありますが、最初は「きょうだいでそんなに違うかなあ……」と、眉につばを付けていたんですよね。でも、いざ読んだら説得力たっぷりで、深く納得させられました。

五百田:年齢差や性別など、いろんな要因が影響を与えるのは確かですが、幼少期の親・きょうだいとの関係が人格形成に与える影響から、人は逃れることはできません。たくさんの人を取材し、改めてそう確信しました。安倍晋三や小泉純一郎といった歴代首相の約半数が中間子だったり、イチローや本田圭佑らスポーツ選手に末子が多かったり、分野によってきょうだい型の傾向が違っていたのも興味深かったですね。

石原:<「きょうだい型」別思考&行動パターン>として、22項目について特徴を解説しているのが面白い。たとえば、「価値観」は<長子は、やるべきことをやる/末子は、やれそうなことをやる/中間子は、みんながやらないことをやる/一人っ子は、やりたいことだけやる>とあります。「注意される・叱られる」の項目では<長子は、「自分が悪かった」と反省する/末子は、「自分のせいじゃない」と開き直る/中間子は、「なんで自分だけ」といじける/一人っ子は、「……!」とパニックになる>。これ、最高ですね。当たっている気がして笑えるし、ギクッとするし、人ってこんなに違うのかと、しみじみ感じます。

五百田:僕は五つ上の兄、三つ上の姉を持つ末子なんですけど、長子の人たちの責任感の強さや成長へのこだわりは、予想をはるかに超えていました。長子の人には、末子の他力本願っぷりや無責任さは、きっと想像もつかないでしょうね。

石原:私は長子ですが(笑)、きょうだい型によって「当たり前」が違う。もちろん「当たり前」は人によって違うわけですけど、普段はそのことを忘れがちです。それが「なぜわかってくれないのか」というもどかしさや、「おいおい、それはないだろ」という怒りにもつながってしまう。

五百田:ダイバーシティー(人材の多様性)というか、それぞれでいいじゃないか、違いを認めて仲良くやっていきましょうというのが、この本の根底にはあります。昨今の世界情勢は、米国にせよ英国にせよ、画一的な方向に行こうとしているように見える。もっと自由でいいじゃないか、という思いも込めたつもりです。

石原:いきなり大きな話になりましたけど、違いを知って違いを尊重するというのは、大人としてとても大事な姿勢ですね。私も、伊勢うどんというコシのないやわらかいうどんを応援することで、違いを尊重する大切さを訴えています。

五百田:ただ、違っていていいじゃないかという結論は、なんだか末子的だなあと、ある日ふと気づきました。長子だったら「人間はこうあるべきだ」という目標がまずあって、それに向かって成長を促す本になったかもしれない。でもまあ、物書きとしての自分の持ち味は、コミュニケーションに関する考察なので、そこで役立つ要素を盛り込もうと思いました。

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