漫画家&TVウォッチャーのカトリーヌあやこ氏は、連続テレビ小説「べっぴんさん」(NHK 月~土曜8:00~ほか)において、数々の設定にツッコミを入れる。
* * *
ヒロイン・すみれ(芳根京子)の口癖は、「なんか、なんかな」。折り返し地点を迎えても、「なんか、なんかな」的にフワッと展開していく朝ドラである。
クリスマス・イブの放送では、靴屋の麻田を演じる市村正親が、いきなりサンタ姿で「ホワイトクリスマス」を独唱。
せっかくだから「表参道高校合唱部!」で歌声を披露していた芳根や、良子役の、ももいろクローバーZの百田夏菜子も参加すればいいのに、あくまでも市村サンタの一人舞台。てか、東急ハンズやドン・キホーテもない時代に、どこから持ってきた、そのサンタコスプレ。まさかの手縫い?
外国人が多い神戸ゆえ、クリスマスが浸透してるのも納得するけど、古き日本的なすみれの父親の実家筋、近江でもピンク色のでっかいケーキを前に、パーティー帽かぶったおばあちゃん(中村玉緒)が、「クリスマスやで~」って、今、昭和のどこあたり? すみれが全然老けないんで、時間軸がなんか、なんかな。
女4人で立ち上げた子供服メーカー・キアリス。女学生時代の手芸倶楽部そのままに、商品作りもお金勘定もフワッフワ。デパートに出すアルマイトのお弁当箱は、ひとつずつ手描きのイラスト入りで、その数なんと300個ですよ!
そもそも弁当箱自体の数が足りないという騒ぎも、なんとなく解決。300個分のイラストが間に合わないという、漫画家も卒倒しそうな修羅場も、お嬢たちがほとんど下書きもせずに直接弁当箱に絵の具をペタペタして見事完成。その絵、水で洗ったら、落ちるんじゃね?という疑問はともかく、あまりにもサクサクとしたこの進行っぷり。「なんか、なんかな」を通り越して、天国から阿藤快が「なんだかなー!」と、ツッコんでくるレベル。
ヒロインたちが「仕事をやめる」と言い出すのも、仲良く順繰り。戻ってくるのも、仲良くためらいなし。
かつて「ファースト・クラス」というドラマで、女同士のドロドロバトルを描いた渡辺千穂脚本だけに、いつかどこかで毒が垂れ流されると期待してたけど。例えば女4人の中、唯一育った環境の違う明美(谷村美月)あたり。きっと悪魔の心の声で「なんやこの、すみれの旦那。いきなり経理になるとか言うて、誰が給料払うと思うとんねん!」なんて毒づいてるはず。
※週刊朝日 2017年1月20日号