「要注意の時期に入ったと思ってください」
東京大学地震研究所の古村孝志教授は、南海トラフ地震の発生について、こう警告する。過去の地震発生周期から、仮に2017年に起きたとしてもそれほど不思議ではないという。
「南海トラフ地震は100年から200年の周期で起きています。昭和の南海地震からも70年になります」(古村教授)
もちろん、地震の予知は難しく、いつ起きるかはいえないが、実は8カ月前にXデーを占うような注目すべき出来事が起きていた。
16年4月、マグニチュード(M)6クラスの地震が三重県沖で発生。専門家の間では南海トラフ地震への警戒感が広がった。プレート境界近くで起き、南海トラフ地震を誘発する可能性が否定できないからだ。過去の地震は、この付近から始まったとされている。
「巨大地震は突然起きるのではなく、2〜3日前からプレート境界が徐々に動き始めてから急速に跳ね上がる。あるいは、数年以上前からも地震発生に向けた動きが見えるかもしれない。気象庁は駿河湾付近の陸のプレートの動きを監視し、海上保安庁は南海トラフ沿いの海底の地殻変動を観測しています」(同)
まだ明らかな異常はないものの、警戒を強めるのは、次に起こる南海トラフ地震は、その範囲や規模が桁違いになる可能性が高いからだ。前回は、M8クラスの地震が2回に分けて襲った。1944年に三重沖で発生した東南海地震と、46年に高知沖で起きた南海地震で、いずれも死者・行方不明者が1千人を超えた。
「昭和の地震では東の端の駿河湾まで震源域が広がらなかった(図参照)。つまり、駿河トラフは1854年の安政地震から160年以上もひずみがたまっていることになり、それが次の地震の巨大なエネルギーになります。宝永地震(1707年)のときには、49日後に富士山も噴火している。すでに300年以上たっており、富士山噴火を誘発する恐れも十分あります」(同)