薬物犯罪に詳しい小森榮弁護士はこう語る。

「ASKA氏は14年の公判で、予試験をやって2回陽性になったことがあると説明しているんです。予試験というのは簡易キットで、自分の尿をスポイトで採ってキットの上に落とすわけですね。そのスポイトが今回使われた可能性もあります。ミステリー小説みたいな話ですけどね」

 スポイトについても、「手のひらに収まるのであれば、ポケットにでもパンツの中にでも忍ばせることができ、おしっこをするふりをして容器に流し込める」(小森弁護士)。

「違法逮捕ではない」などと捜査ミスを否定する警視庁だが、厚生労働省近畿厚生局麻薬取締部の捜査1課長を務めた経験がある高濱良次氏は、自宅での採尿となった点についてこう言う。

「尿の提出を求める場合、通常は派出所もしくは警察署に連れていって、トイレで排尿させる。ところが、本人が自宅で出します、というケースも過去にないとは言えない。その場合、横から本人が容器に排泄するところを見届けます」

 採尿時、ドアを開けたまま、妻と警視庁組織犯罪対策5課の捜査員が背後から見ていた。だが、捜査員は手元までは見ていなかった。

「トイレが狭いのであれば、捜査員は本人の肩ごし、あるいは体の側面から見ていないといけない。今回は、見ていなかったから結果的に起訴できなかった。検察は公判維持が難しいと考えたのでしょう」(高濱氏)

 採取にも厳格なルールがあるという。

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